【洞爺湖サミットに何を期待するか】(第4回)グローバルな平和育成への契機(中編)
国連大学高等研究所客員教授 功刀達朗
(第3回より続き)本来世界の平和育成機能の重要部分は、唯一の普遍的機構である国連に任されているが、その機能強化への好機が最近生まれつつある。G8サミット参加者と議長は、この好機に着目し、公式な議論の場において、或いは非公式な意見交換の機会に、G8サミットと国連の相互補完性に関連して是非議論してもらいたい。
●核削減・廃絶を目指す動き
長年にわたり核兵器保有国の多くは、1994年以来日本が国連総会に毎年提出し続ける核廃絶決議には、たとえ原則的賛成を表明しても実際には足を引っ張る態度をとってきた。95年に開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議以後の核保有国の行動から判断すれば、NPTの実施にも常に強くコミットして来たわけではない。しかし昨年1月の米政界の重鎮キッシンジャー元国務長官、シュルツ元国務長官、ナン元上院軍事委員長、ペリー元国防長官の4名による核不拡散と廃絶に関する提案がなされてから、「核兵器への依存」は真剣に見直されつつある。米大統領候補オバマ議員もマケイン議員もこの提案には前向きである。2006年に提出されたブリクスを委員長とする「大量破壊兵器委員会」の優れた分析と廃絶のための60の現実的提言も広く読まれ、次第にインパクトを増した感がある。核の抑止力に依存する不安定な平和から依存なしの安定的平和への道筋を求める動きがG8で芽生えることを切に祈りたい。南半球は既に全域が非核化されている。北半球でも中米、ASEAN、モンゴル、中央アジア5ヶ国その他が非核地域となっている。
議長国日本は核廃絶を強く希求する国民感情を踏まえ、米国の核の傘への依存からの脱却を図る必要がある。世界の趨勢としては、「軍事同盟漂流」の時代を迎えるであろう。そして日米同盟もこの例外とは言い難い。因みに今月オーストラリアは元外相エバンズを共同議長とする核兵器廃絶に向けた国際委員会の創設を決定し、日本からも主要メンバー(豪の通信社情報では共同議長として)の参加を呼びかけている。
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