映画プロデューサーでもあるバノン氏と縁のある「映画の街」ハリウッド。そこはカリフォルニア州の南に位置する。カリフォルニア南部といえば、かつて日本人を強制収容所に収容した典型的な人種差別の地域であり、いまや主要メディアやインターネットを操るハリウッドパブリシティを通じて、「アメリカの世論」を支配している地域でもある。そんな今日までの歴史的事実について、戦後の日本人はすっかり疎くなってしまっている。
ハリウッドのスターの多くは、アメリカ庶民(白人を含む)から、しばしば「ホワイト・アンド・イビル(白人&悪魔)」と呼ばれている。そんな強い批判を受けている大金持ちだ。彼らは日本では想像もつかないほど人種差別主義者が多い。そのスターたちを含めハリウッド全体が、大統領選挙中、トランプ候補に対してメディアを通じて徹底的に批判、罵倒してきた。
ウォール街のコンセンサスでは、ハリウッドの人種差別主義はトランプ陣営のそれとは別の類のものとされる。その強い人種差別主義を背景に、トランプ氏が大統領になってからもその批判、罵倒は続いている。トランプ大統領はそんなハリウッドとメディアが大嫌いであり、恨んでもいる。
アメリカの半分とメディアの大半は敵
そのトランプ大統領がイスラム差別主義者のバノン氏を使って大統領令に署名した。トランプ大統領自身、歴代大統領のなかでも無類のメディア嫌いだが、トランプ大統領にとっての真の大敵はメディアでもハリウッドでもない。イスラム過激主義者率いるISISである。ISIS掃討のためなら、ロシアのプーチン大統領と組むのもためらわない。愛国者であるトランプ大統領にとって、テロとの戦いは至上命令なのだ。
さて、日本のことをトランプ大統領はどのように思っているのか。日米首脳会談の前にジェームズ・マティス国防長官を訪日させたが、1月28日の安倍首相との電話会談でトランプ大統領はこう伝えた。「いちばん信頼している閣僚を送る」と。日米関係などアジア外交の軸足はバノン氏よりもマティス氏においている。日本をしっかり守るというトランプ大統領の基本姿勢がそこにある。
実は、そこを正確に評価するか否かが日米交渉の大きなポイントだ。日本のメディアは相変わらず被害者意識をあらわにしているように思う。為替介入をめぐるトランプ大統領の発言を「日本を名指しで批判している」と伝え、不必要な脅え、不安心理をあおっている。
トランプ大統領は腹の中では、アメリカの半分とメディアの大半は敵であり、「トランプを差別している」と思っている。その差別されている大統領自身がイスラム差別主義者のバノン氏を使っている。トランプ大統領はバノン氏のやり口を百も承知のうえで一歩ひいてバランスをとっているというのが、ウォール街における主流の見方だ。
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