日米会談・交渉の成否は「人種差別に左右されないこと」がキーワードになる。トランプ政権は、決して日本を差別的な目では見ていない。まずは、そこをおさえておきたい。1980年代の日米摩擦、その後の日米構造協議の時のほうが今よりも人種差別的な見方が濃厚だった。そんな1980年代と今とは違う。アメリカの庶民感覚では、白人至上主義者のレッテルを貼られたトランプ大統領より、むしろハリウッドのほうが人種差別主義だ。
トランプ大統領が日本を差別的な目で見ていない証拠がある。それは大統領就任前に最初に会った海外首脳が安倍首相だったことだ。その会談はニューヨークのトランプタワー私邸内で行われたことは周知のとおり。そこにはトランプ大統領の娘のイヴァンカと娘婿のジャレット・クシュナー氏も同席した。会談後、安倍首相はトランプ大統領について「信頼できる指導者」と語った。大統領就任前に世界に発信された安倍首相のメッセージはトランプ次期大統領の胸を打ったに違いない。
もう1人、大統領就任前に会った日本人がいる。ソフトバンクグループを率いる孫正義氏だ。トランプ氏は報道陣の前で孫氏のことを「MASA」(マサ)と2度も呼んだ。この親しみを込めた連呼は、その「A」に込められた独特な発音からして、“I love Japan”という最上級の日本贔屓のメッセージといえるだろう。
そのメッセージはアメリカのメディアにわかるように発信されたものだが、アメリカのメディアはそのニュアンスを抹殺してしまった。その結果、日本のメディアにはその真意が伝えられていない。あえて極論するが、アメリカの大手メディアはハリウッド流の人種差別主義の影響下におかれている。その現実を忘れてはならない。
「君のことはイヴァンカが気に入っている」
トランプ大統領によるトヨタ自動車のメキシコ工場に対するツイート経由の批判にしても、日本企業への批判ではない。トヨタをGM、フォードと同列において批判しているのだ。アメリカの庶民目線からすると、トヨタは立派なアメリカ企業なのである。それを承知のうえで、トランプ大統領はトヨタをアメリカ企業として均等なプレッシャーをかけたつもりだったのではないか。
トランプ政権のなかで日本の存在はクローズアップされている。トランプ大統領はロシアのプーチン大統領とまだ会っていない。トランプ大統領にとって、膝を突き合わせて外交交渉ができる海外首脳はたった2人である。それは、イギリスのメイ首相と日本の安倍首相だ。
日本にとって何よりも心強いのが1月28日の電話会談でのトランプ発言だ。トランプ大統領は安倍首相にこう言った。「君のことはイヴァンカが気に入っている」と。目のなかに入れても痛くない最愛の娘の気持ちをわざわざ伝えたのだ。これは、”We are family”(私たちは家族だ)と言ったも同然である。10日の首脳会談翌日にパームビーチでゴルフをすることの意味も、きわめて重要だ。
トランプ大統領がそんな親愛なるメッセージを送っていることに日本では誰が気付いているのか。日本のメディアはともかく、もし安倍首相側近や官邸筋が気付いていないとすれば、日米交渉の日本側の判断を誤らせることになる。この認識ギャップが存在するとすれば、それは早急に埋めなければならない。そうすれば、日米交渉は成功し、今後の日米間の関係強化に大いにプラスになるだろう。
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