トランプ閣僚が「日韓訪問」を最優先した理由 東アジアに差し迫った脅威とは

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こうしたなか、米国は早急に、北朝鮮の核兵器開発に対する姿勢を明らかにすると同時に、北朝鮮によるあらゆる攻撃を抑止する責任があると再確認する必要がある。新アメリカ安全保障センターのアジア安全保障専門家であるパトリック・クローニン氏は、マティス氏が日本と韓国を訪れ、同盟体制を再確認することは、「昨年の米大統領選挙中に引き起こされた衝撃の余波や、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を含む大統領令を矢継ぎ早に出していることによる混乱、そして、新政権の方針がまだハッキリとしていないなかでとてつもなく重要な意味をもつ」と話す。

とりわけ、今回韓国を先に訪問することで、「米国と韓国の同盟関係は強固であることを示し、あらゆる不測の事態に備えられていることを確認したい」(クローニン氏)ようだ。

日本では何が話し合われるのか

日本ではおそらく、日米同盟の結束感を高め、有事の際の意思決定や作戦行動の合理化につながる日米の統合指揮系統を実現したいという、米国の従来の考えを繰り返すとみられる。日本側はというと、中国と緊張関係をもたらす原因となっている尖閣諸島が、日米安全保障条約第5条の適用下であると、米国が再確認することを求めるだろう。

一方、日本では関心の高い普天間基地の辺野古移設問題については、議論が見送られる公算が高い。翁長雄志知事中心に沖縄県は新施設に強く反対しており、1月31日にもワシントンを訪れ、ホワイトハウスや米議会で代替案を示すことを試みていたが、米政府内ではこの代替案への関心は薄い。昨今の米政権はいずれも、辺野古は現在の普天間基地にかわる唯一の場所だという認識で一貫しているからだ。

もっとも、米政府内で広く尊敬されているマティス国防長官でさえ、今回の日韓訪問で与えられているミッションはかぎられており、重要な課題についてはトランプ大統領の戦略を待たねばならないだろう。

対中問題はそのひとつだ。トランプ大統領は自らの米国第一主義の下、オバマ政権が必死に進めていたTPPをあっさりと離脱してしまったが、TPPの目的のひとつは、共同体の多くの地域を緩やかに結びつけることで、東アジアにおける中国の台頭をある程度抑えることだった。しかし、TPPがなくなった今、米国は新たなアプローチで東アジアにおける平和を維持することが求められる。

具体的に言えば、TPPという枠組みなしに、米国は中国の南シナ海における積極的な活動に対抗しなければいけない。しかも、米国による強硬姿勢を望む日本と、中国との緊張関係をあまり高めずに、「穏便に」問題を解決に向かわせなければいけないのだ。

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