視聴スタイルとともに視聴率が変わり始めた

世帯視聴率だけではもうテレビを語れない!

さて今度は、次々に登場してきている「新しい視聴データ」を紹介したい。注意事項として、これらは決して既存の指標に取って代わろうというものではなく、むしろその価値を裏付けたり補ったりするために出てきたことを理解してもらいたい。

「世帯視聴率以外のデータの存在を認めるな!」というムードが、正直言ってこれまでの業界にはあったように思う。だが今は、むしろ多様なデータを積極的に使っていこうとの気運が大手代理店やテレビ局の一部に出てきている。もはやこれまでの殻に閉じこもっている場合ではなくなったのだ。

視聴率の“another”としてはまず、スイッチ・メディア・ラボ社のテレビ視聴分析サービス「SMART」がある。関東圏のみだが2000世帯・5000人のサンプルを持つ。対象世帯のテレビには特殊なリモコンが設置され、誰が何を視聴したかがわかる仕組みだ。

同社のデータの特徴は、番組を見ている人が「どんな家庭の、どんな嗜好の人物か」がわかることだ。モニターとして登録する際に、世帯について年収や住居形態や所有物、ライフスタイル・生活価値観などを150項目にわたって情報を得ている。企業にとって製品のターゲティングは、もはや性・年齢だけでは済まなくなっている。CMを打つ際に、自社にとってのターゲットが視聴してくれているかがわかれば、企業にとって大いに役に立つだろう。

見直されるテレビのリーチ力

ということは、テレビ局にとっても企業に番組をセールスする際に、同社のデータは大きな武器になる可能性がある。視聴率は低くても、御社の製品にふさわしい層が見ています!というセールストークができるというものだ。

ネットの登場で一時期、広告媒体の主役がマスからネットにシフトすることが危惧されたが、最近は逆にテレビのリーチ力はやはりすごいと見直されている。一方で、人々がネットを非常に日常的に活用する傾向は明らかだ。そこでむしろ、テレビとネット全体を人々がどう回遊しているかが大事になってきている。その場合、漠然とテレビの視聴率とネットのPV数を計測するだけでは何も見えてこない。そうではなく、ひとりの視聴者がテレビとネットをどう動き回るのかを把握することが求められるようになった。ひとりの人間の、各メディアでの行動履歴を把握するための調査基盤を「シングルソースパネル」と呼ぶ。

その代表が、インテージ社の「i―SSP」だ。同社はもともと購買データ、つまり人々が日々何を買うのかの調査を行ってきた。そこからさらに、テレビやネット、新聞・雑誌も含めたメディア接触も調査するようになった。日本でのシングルソースパネル調査の雄として非常によく知られる存在だ。購買データを核にしているので、ひとりの人物がテレビに接触した後ネットでどう行動してから商品を購入したかが、事細かに把握できるのだ。マーケティング界では高く評価されている。

これに負けじと、世帯視聴率調査のビデオリサーチもシングルソースパネルを開発して業界で注目されている。「VR CUBIC」の名称で、テレビとネットの両方について、ひとりの人間の接触パターンを調査している。i―SSPのような購買データは紐づいていないが、調査対象者のプロフィールを把握できるので、どんな人物がどうメディアと接触したかもわかる。世帯視聴率調査とセットで活用すれば、これもテレビ局のセールスに役立ちそうだ。

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