視聴スタイルとともに視聴率が変わり始めた

世帯視聴率だけではもうテレビを語れない!

一方で、分散型視聴がリアルタイム視聴への入り口の役割を果たす側面も十分にある。録画機をよく使う人は、それだけテレビが好きな人だとも言える。私もその典型だが、毎クールのドラマが始まる時期になると、手当たり次第に録画予約をしておき、気になったものからタイムシフト視聴をしていく。特に気に入ったものは徐々に、リアルタイム視聴するようになる。

録画機をさほど使わない人でも、今はTVerのような見逃し配信サービスによって前回を見て「追いつく」ことが可能だ。人によっては有料の各局の動画サービスに加入して第1話からイッキ見して追いつこうとする。分散型視聴ができる環境が整ったからこそ、それらがリアルタイム視聴につながる可能性もまた出てきているのだ。

「逃げ恥」で起こったこと

それがはっきり具体化したのが、TBSテレビの「逃げるは恥だが役に立つ」だった。以下はそれを証明するデータではなく私の仮説だが、否定する人もあまりいないと思う。「逃げ恥」で起こったことを図式化して見た。

この図で重要なのは、TVerとタイムシフト視聴が、「ネットでの話題」とリアルタイム視聴の「橋渡し」の役割をしている点だ。

「逃げ恥」の場合、「恋ダンス」動画がネット上で話題になった。ネットメディアにあふれんばかりの記事が載り、それがツイッターやフェイスブックで拡散されて人々の目に留まった。動画を見た人の多くが、TVerなどで第1話を見たり、録画してあった第1話を見たりしただろう。

とりあえず録画してあるが見るかどうか決めていなかった人が大勢いる。これはどのドラマでもそうだろう。それが、「恋ダンス」によって刺激されてタイムシフト視聴をした。ビデオリサーチの発表では、「逃げ恥」は10月に最もタイムシフト視聴された番組だった。録画予約したドラマは他にもあったはずだが、再生に至ったのは「逃げ恥」が多かった、ということだろう。「恋ダンス」の話題の大きさがほぼ、タイムシフト視聴の量につながったと見ていいと思う。

TVerで第1話を見た人も、第2話をいきなりリアルタイム視聴したかというと、そう単純ではない。順番としては、まずは録画予約をしておき、家にいればリアルタイム視聴する、家にいなければタイムシフト視聴する、という流れだろう。だから「逃げ恥」は視聴率とともにタイムシフト視聴率も高まっていった。

「逃げ恥」はその後も新たなメンバーでの「恋ダンス」を送り出す。系列局が自発的にダンス動画を配信する。ドラマのなかでもパロディや二人の恋の展開がネット上で話題になる。それがまたTVerでの視聴を促し、タイムシフト視聴を増やしていく。そうやっていくつもの渦巻きを生みながら、リアルタイム視聴を徐々に増やしていった。最終的に関東で20%を超えたばかりか、各ローカル局の数字がそれを超えてよかったことまで話題になった。

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