視聴スタイルとともに視聴率が変わり始めた 世帯視聴率だけではもうテレビを語れない!
非常に不思議なことに、「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」はもっと視聴率が高かったのに、“ホットさ”めいたものが感じられない。ネットで話題にならなかったからだ。リアルタイム視聴しかマネタイズできないのだからそれでいい、という割り切りもひとつの考え方だろう。ただ、「逃げ恥」が終了後も“余韻”を世の中に発し続けているのに対し、「ドクターX」のことはもはや世間は忘れてしまったかのようだ。それがこの後、2つの局のドラマにどんな影響をもたらすのかは、まだわからない。
こうして見ていくと、タイムシフト視聴は番組が話題になりリアルタイム視聴を押し上げていくなかでの「キードライバー」の役割を果たしていると言ってよさそうだ。ネットでの話題の受け皿であり、リアルタイム視聴率が上がっていくための“助走”とも言える。
「C7」の採用に踏み切れるかが今後の課題
ところで、テレビ局関係者なら、このタイムシフト視聴率がマネタイズできていないのはよくご存知だろう。理由ははっきりしていて、タイムシフト視聴ではCMはある程度スキップされてしまう。スポンサー側としては、どれくらいスキップされているのか、あるいは意外にCMも見てくれているのか、はっきりしないのにCM料金は払いたくないのが本音だろう。
私はタイムシフト視聴率の導入後に、たまたまある大手企業の宣伝部の方からこんな意見を聞いた。「タイムシフト視聴率に応じて広告費を上乗せなんてできないです。われわれも新しい基準を作る気持ちはあります。でもそのためには腹を割って話してくれなければ。われわれもいろんなデータを見てますからね」。あくまで雑談の中でポロリと出た話だが、私は痛烈なひと言に感じた。
これもまた皆さんご存知の通り、アメリカでは「C3」という数値が指標になってCM枠が取引されている。「C」はまさにCM、つまり番組ではなく広告を見ている視聴率。「3」は3日後までという意味。CMを見ている時間を、番組放送3日後までカウントした数値を指標に使っているのだ。
聞いた話では、タイムシフト視聴にも広告料金を払ってほしいテレビ局側と、CM視聴だけしか広告料金を払いたくないスポンサー側の間で、喧々諤々の議論が数年間展開された末、CM視聴だけ3日後まで計測したら、たまたまその時にはこれまでの取引額と変わらなかった。そこでC3に移行したのだそうだ。
だったらアメリカでの先行事例を参考に、日本でも「C」で取引することを議論すればいいのだと思う。その場合、日本のタイムシフト視聴率がすでに7日後までで算出しているので「C7」になるのだろう。
先述のスポンサー宣伝部の方も「新しい基準づくり」には前向きだった。世帯視聴率という取引基準もテレビ局とスポンサー企業で一緒になって作ってきたのだから、タイムシフト視聴率を取り入れた新しい基準も、一緒に作れるのではないだろうか。「腹を割って」話し合うことが大切なのだと思う。
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