子供への性犯罪、元受刑者を追跡すべきか 再犯防止とプライバシー保護とのバランスは
子どもへの性犯罪で服役した人物が、出所後に所在不明になるケースが大幅に減っていることが朝日新聞で報じられた。2010年には、対象者740人中200人(27%)の所在が確認できなかったが、2015年末では1521人中41人(2.7%)となり、大幅に減っているという。
法務省は2005年から、強姦など、13歳未満の子どもへの性犯罪で服役した人物の氏名や所在などの情報を、警察庁に提供している。この情報などに基づいて、各都道府県の警察本部と住居を管轄する警察署が、数か月に一度、対処者の居住状況を確認して情報を共有している。2011年からは、同意が得られた対象者に面談も実施しているという。
再犯防止のために、こうした措置が必要とされていると考えられるが、一方で、出所した人物を追跡することは、法的には問題がないのか。憲法問題に詳しい猪野亨弁護士に聞いた。
元受刑者であっても「プライバシー侵害」の可能性
一般的に、性犯罪者については再犯率が高いとも言われています。出所した後の再犯を防ぐことが、被害発生の防止でもあり、課題のひとつでもあります。
もっとも、犯した犯罪に対しては既に服役したのですから、それ以上に犯罪者扱いされるいわれはありません。
法務省が警察庁に情報提供するということは、住所という個人情報についての登録を管理するだけでなく、積極的に開示していることになります。
警察による監視のための提供ですが、住所などの個人情報はプライバシー権として憲法13条によって保障されています。こうした権力からの監視は、住民票登録という目的を超えており、プライバシー権を侵害するものです。