経済成長を否定しようとするのは、経済成長というものを間違って理解しているからではないか。人々が保有しているテレビやパソコンの台数が増えるという、いわば物量の拡大も経済成長の1つの姿だ。しかし、これだけが経済成長ではなく、物量が増えることが経済成長に必須だというわけではない。より質の高い商品の生産が増え、質の悪い商品の生産量が減るということでも経済成長は起こる。
今まで存在しなかったような新商品が提供されることで、人々の生活は豊かになる。残念なことに実質GDPは、既存の製品の質の改善は何とか取り込めているといえるだろうが、新商品やサービスの誕生による人々の生活の改善は十分に記録できていない。より高級なタイプの商品が安く買えるようになったということであれば、価格の下落という形で実質値の伸びを記録できる。
人類の進歩が続くかぎり、現実社会の経済成長は続く
しかし、これまでなかった商品やサービスが登場したときに、どう評価するのかは相当難しい問題だ。そもそも新商品が登場しても生産量がある程度の量に達しなければ統計調査で新しい製品として独立して記録されるようにはならないので、実態を知ることすらできないだろう。新商品が発明されて販売されたことで生活が改善しても、実質GDPはそれを十分には反映できていないはずである。
人類の自然界に関する理解は、まだまだ不完全なものだ。これからも、さまざまな発見が行われ、まだわれわれが知らない自然界の法則を使った想像もつかないようなものが発明されるだろう。それがその時代の人々の生活を改善するようなものであれば、原理的にはGDPに反映されるようになるはずだ。人々が欲しいと思っているような商品やサービスが販売されるようになれば、生活は改善する。仮にさまざまな問題から統計として発表されるGDPに反映されないということがあったとしても、人類の進歩が続くかぎり現実社会の経済成長は続くのである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら