GDPには「売春」もカウントしていいのか 「経済成長を図る物差し」GDPの限界と課題

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石油危機の直後には、GDPを増やすためにどれだけの原油が必要かという計算が盛んに行われた。実質GDPを1%増やすためには何%のエネルギー消費の伸びが必要かを表すエネルギー弾性値の議論が行われ、エネルギーを賄うために必要な原油輸入の制約から日本の経済成長は難しいという議論もあった。環境への負荷を考えれば、天然資源を使用してモノを作ったり、エネルギーを消費したりするということを拡大していくことが続けられないのは明らかだ。

しかし「経済成長するためには、より多くの天然資源を消費する必要がある」という考えは正しくない。資源エネルギー庁の『エネルギー白書2016』によれば、1973~2014年度までの間に実質GDPは2.4倍になったが、エネルギー消費は1.2倍に増えただけだ。さらに2004年度以降を見ると実質GDPは若干増えているが、エネルギー消費は1割以上も減っている。経済成長するために必ずしもより多くのエネルギーを必要としているわけではない証拠で、最初に説明した量の拡大とは違うメカニズムで経済成長が可能だからだ。

時代に応じて変わるGDPの概念

このように、GDPという経済指標は歴史的な経緯を見ても完全無欠ではなく、さまざまな問題を抱えている。だがGDPを増やすことだけに夢中になって、その意味を忘れてしまうのは困るが、GDPが正確には社会の豊かさを表せないからといって無視してしまうのも行き過ぎだ。

昨年12月にSNA統計(GDP)の基準改定が行われたことによって、名目GDPはそれまで公表されていたものに比べて2015年度では約30兆円上方に修正された。

この差は、これまでのGDP推計に漏れがあったというわけではなくて、GDPとして何をカウントすべきかという考え方を変えたためだ。これは経済のサービス化が進んで生産設備とは結び付かないような知的財産の重要性が増したことが原因だ。これまではR&D(研究・開発)への支出はGDPにカウントされなかったが、知識ストックを増加させる投資だという考え方を取るほうが、現実の経済の状況に適するようになったのだ。

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