日本人が知らない注目健康食「テフ」とは何か

エチオピア発スーパーフードの正体とは?

日本でもテフは健康志向の高まりを背景に注目されつつある。トワコーポーレーション(本社:東京)は昨年8月に日本では初めて本格的にテフの販売を始めた。オンラインでの販売と同時に、大手スーパー、百貨店、輸入食品店、高級食材店、ベジタリアンレストランなどにも販売している。「テフは健康志向の高い人々にも好まれており、販売開始以来、かなり速いスピードで売れている」(同社第二営業部田中英介課長)と話す。テフの日本での食べ方は、ご飯と一緒に炊く、スープに入れる、ゆでてサラダのトッピングにするなどが一般的でインジェラとしての食べ方はしない。同社は加熱しなくてもそのまま食べられるフレーク状や、パンやパンケーキなどの生地を作ることができるパウダー状のテフも販売している。

高い栄養価、“グルテン・フリー”なテフ

テフの歴史は古い。人類発祥の地とされるエチオピアはテフの発祥の地でもあり、テフを3000年以上前に栽培化し、生産してきた。テフはエチオピアで最も広く栽培されている主要な農作物で、エチオピア農業省によると2014年のテフ耕作面積は302万ヘクタール。650万世帯もの農家がテフを生産している。

テフの粒。下に落としてしまうと見失うほど極小だ(写真:上野きより)

テフの籾長は0.9~1.7ミリメートルと極小で、“テフ”の名はエチオピアの公用語であるアムハラ語の“見失う”に由来するという説もあるほどだ。テフは小麦や大麦に比べて2~3倍の鉄分を含み、タンパク質やカルシウム、ミネラル、繊維も豊富。エチオピア人アスリートたちの身体能力の高さはテフの栄養効果のおかげともいわれている。

また、テフは健康志向の高い人たちの間で注目されている“グルテンフリー”な穀物で、グルテンを含む小麦粉にアレルギーを持つ人も安心して食べられる。“グルテンフリー”の食生活は体調を良くするという評価が広がっていることもあり、“グルテンフリー”の食品やメニューは欧米を中心に広がっている。トワコーポレーションも、「テフは味にクセがなくおいしい。日本でもグルテンフリー志向が広がっており、それに伴い、テフの人気も今後さらに広がるだろう」(田中課長)と話す。

エチオピア政府は輸出によりテフの価格が高騰し、エチオピア人がテフを買えなくなるとの懸念から、2006年以来テフの輸出を禁じてきた。この措置には過去にボリビアやペルーで古くから主食だった穀物キヌアがスーパーフードとしてもてはやされ、価格が高騰したという背景がある。したがって現在エチオピア国外で流通するテフはエチオピア産ではなく、米国や欧州で生産されたテフだ。そのエチオピア政府も来年度から一部商業農場で生産するテフの輸出を解禁する方針で、国際的にエチオピア産のテフとしてブランド化して販売していくという。

エチオピアでは、テフはいまだ牛を使って耕した畑で栽培され、収穫は手で刈ってなされる。多くの貧しいテフ農家はテフが先進国で“スーパーフード”ともてはやされ、高値で売られていることなど知るすべもない。テフの1ヘクタール当たりの生産量はほかの穀物と比べるとまだ格段に低く、世界の中でも最貧国で多くの国民が国際機関の食糧支援に頼っているエチオピアにとり、生産性の向上はつねに課題となっている。

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