トランプ政権の政策は「未曾有」にはならない

日本では経験済みの政策も多く、対応は可能

米国の政党は、党派性が明確であるだけに、政権が交代するとがらりと政策スタンスが変わることは、これまでの歴史で幾度もあった。政治経済学でも、党派的景気循環の理論があるほどだ。理念の異なる与党が異なった経済政策を行うために、政権交代によって景気変動が起こるとするのが、党派的景気循環論である。

例えば、共和党はより保守的で、民主党はよりリベラルであり、その2つの政党を支持する有権者は異なった好み(選好)を持っている。欧米の研究によると、より保守的な政党を支持する有権者は、多少失業率が高くても低いインフレ率を望み、よりリベラルな政党を支持する有権者は、多少インフレ率が高くても低い失業率を望むといわれている。それぞれの政党は、どちらも政権の獲得のみが目的ではなく、自らの理念を実行することを目指している。

したがって、共和党政権下では失業率はやや高いがインフレ率の低い経済になり、民主党政権下ではインフレ率はやや高いが失業率の低い経済になることが予想される。政権交代が確実に予想できる場合は、消費者や企業は予め将来の与党の経済政策を予想して調整できるから、政権交代によるショックはマクロ経済活動にほぼ影響しない。

しかし、選挙ではどちらの政党が勝つかは不確実である。そのため、選挙の時期のインフレ率や失業率は、共和党が勝つ確率と民主党が勝つ確率を織り込んだインフレ率や失業率になる。ただ、選挙結果が予想外となった場合には、マクロ経済に(好影響も悪影響も含む)ショックとして実質的な影響を与える。予想外の政権交代は経済の動きと無相関(ランダム)に生じうるから、ランダムなショックから景気循環も生じる。また、政権交代の予想から外れた度合いが大きいほど、2大政党間での理念の相違が大きいほど、景気循環の変動幅は大きくなる。これらが、党派的景気循環の理論からの示唆である。

米国内の雇用創出をどんな政策で実現するか

さて、トランプ新政権下での米国の景気は、どうなるだろうか。トランプ氏は、かつては民主党支持者が多かった労働者層からの支持を得て大統領に当選しただけに、多少失業率が高くても低いインフレ率を望む典型的な共和党政権とは異なる政策スタンスをとるかもしれない。

「経済成長を加速させ、最強の経済を作る」ことを目指しているトランプ新政権。当面は、米国内の雇用創出に力を入れるとみられるが、保護主義的な政策によって実現するか、自由貿易志向で実現するかは、必ずしも自明ではない。確かに、大統領就任前のトランプ氏の言動からは、保護主義的な政策で実現しようとしているように見える。有名な多国籍企業を名指しして、米国内の雇用についてトランプ氏自らが介入する場面もあった。

しかし、これまでの歴史的経緯を見れば、米国の製造業は、米国内での雇用を維持することで生産性を高めたり利益を増やしたりしてきたわけではない。米国内での雇用に固執するがあまり、中長期的には逆に米国の製造業の生産性や収益性を落とすことさえありえる。

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