トランプ政権の政策は「未曾有」にはならない 日本では経験済みの政策も多く、対応は可能

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トランプ新政権の財政政策に目を転じれば、大統領選挙中から公約していた連邦法人税率の引き下げや、インフラ投資などに早期に着手するとの見方がある。ただ、本連載記事「トランプ新政権は本当に財政拡張となるのか 財政政策には議会共和党の協力が必要」でも詳述したように、トランプ新大統領の一存だけで、財政政策を決めることはできない。アメリカ連邦政府の予算編成権は議会にあり、議会共和党の同意を得なければ実行できない。

新大統領と議会共和党の力関係に注目

今のアメリカ経済を踏まえてどのような財政運営が望ましいかは、ここでは不問に付すとして、トランプ新政権下でどのような財政政策が実施されるかは、トランプ新大統領と議会共和党の力関係を示すバロメータになろう。

トランプ新大統領と議会共和党は、今のところ連邦法人税率の引き下げでは意見の一致をみているようだが、インフラ投資の規模については必ずしも意見が一致していない。「小さな政府」を志向する共和党議員も多く、連邦議会での党議拘束が弱いだけに、大規模なインフラ投資が「大きな政府」を惹起させれば共和党内から反対が出て実現できないこともある。大統領府に強い権限が与えられており、主導権が握れる外交や通商政策との違いである。

約2年後の2018年には、連邦議員の中間選挙もあって、今のところ歴代大統領より支持率が低いトランプ新大統領の意向に、共和党議員がいつまで、どれほど従うのかは分からない。外交や通商政策のみならず、財政政策の行方からも目が離せない。
 

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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