4.自らが重要視する「価値観」を明確にする
就任演説では国民をひとつにしていくためにも、自らが最も重要だと思う価値観を示すことが求められる。とりわけこのイベントでは、利害関係者に対して「Shared Value(シェアードバリュー=価値観の共有)」を示すことは非常に重要である。トランプは選挙期間中、ライバルとの間で、「強いvs.弱い」「本音・正直vs.偽善」「変化vs.現状維持」といった対立軸を描くのに成功してきた。
したがって、強さ、本音・正直、変化といった価値観は、シェアードバリューとして多用されるキーワードになるだろう。また「有権者との契約」の中などでも多用している法の支配や、法に基づいた公平性を繰り返し強調することで、「正しさ」も重要な決まり文句として打ち出してくるのではないだろうか。
強さや変化、正直さを強調するか
5.「セルフブランディング」を進化させる
トランプの大統領としてのセルフブランディングはすでに明確である。上述のとおり、強い、変化をもたらす、本音・正直などである。もしトランプが自らの就任演説を歴史的なものにしようと考えているのであれば、これまでの暴言とのバランスをとるためにも、演説の中で、honestly(正直に), truthfully(本当のところ), frankly(率直に言って), boldly(大胆に言って), candidly(ありのままに)など、多彩な表現や首句反復・並列・対比・隠喩などのレトリックを駆使して、自分が実直な人物であることを印象づけることを狙ってくるだろう。
こうしたキャラクターを見事に演じ切り、これらの価値観やリーダーとしてのあり方を伝えていくためにも、就任演説では服装から始まって、話し方、ジェスチャー、トーン、リズム、表現に至るまで、強さ・変化・実直さを意識と潜在意識に書き込んでいくことに腐心するはずだ。それを実現するために、就任演説の場面においても、「ファーストドーター」であるイヴァンカを筆頭としたファミリーも大きな役割を演じることになるのではないだろうか。
最後に、トランプは、大統領選挙の結果が判明した直後の勝利演説の最後に、「2年、3年、4年、そして8年の間、国民のみなさんが私たちのために協力したいと言ってくれることを望んでいる」と、すでに事実上の「2期8年宣言」を行っている。トランプが実際に再選を果たすには、政権運営マーケティングにおいて複雑かつ多岐にわたる利害関係者を対象に政治を実行していくことが欠かせない。
就任演説はその後の大統領の行動や成果を評価する大きな指標となる。国際社会をさらに分断するようなエキセントリックな大統領ではなく、歴史に名を残すような正統派の大統領としての就任演説を期待したいものだ。
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