LINE「無料出張授業」に依頼が殺到する理由 超リアルな情報教育は、ここまでこだわる

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分類し終わったら、判断のポイントとなる発言やスタンプに赤丸を付け、班内で共有する。分類の仕方や、赤丸の付け方にかなり個人差が出るのは興味深い。その後グループで意見をまとめ、他班のまとめと比べてみる、という流れで授業は進行していく。教室のあちこちから「え、これくらいの発言は普通でしょ?」「いや、待て待て!」などと、活発な議論が聞こえてきた。

この授業にも、やはり明確な答えがあるわけではない。

トークの中で、生徒が赤丸を付ける場所はそれぞれ異なる。他人との違いを知ることも授業のポイントだ(記者撮影)

生徒に注目してほしいポイントは、トークの内容だけでなく、グループの規模やメンバー構成、トークが進行している時間帯などだという。

「たとえば、仲良しグループなら笑って済むような発言が、大人数の中では誤解を生むかもしれない。また、夜中だったら早く寝たいと思って困っている人がいるかもしれない。実際にトラブルとして顕在化するかはさておき、そのリスクを見積もるためのポイントを知ってほしい」(塩田准教授)。

LINEにとっては単なるCSRではない

授業を終えた女子生徒(3年生)は「メッセージを送った後で、この内容で大丈夫だったかなと不安になることがある。(授業の内容は)送る前にちょっと考えてみるときに役に立ちそう」と感想を語った。

塩田准教授は今後、生徒に対する情報モラル教育のバリエーションを増やすだけでなく、新しいサービス創出につながるアイデアを出し合う授業や、保護者を対象としたプログラムについても模索したいと意気込む。

LINEによるコミュニケーションのトラブルを避け、楽しく活用する方法を知ってもらう。将来、さまざまなLINEのサービスを利用する可能性がある10代のユーザーをつなぎ留めることは、移り変わりの激しいネット業界でLINEが生き残っていくためにも必須だろう。情報モラル教育は、LINEにとって単なるCSR(企業の社会的責任)にとどまらない意義がある。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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