「この私たちの貸し付けの法則を怠けたこともあるが、そうやって貸し付けた案件はやっぱり回収率が悪いけん」。岡西さん本人は謙遜めいて言うが、責任者2人がともにゴーサインを出さないと原則仕事にしない、という取り決めはシンプルかつ小企業の意思決定としては、あるいはファミリービジネスとしては特に的を射た参考にできる方法だ。
簡単にはまねができないくらいに地道に
本来はこの「誰でもできるファミリービジネス」を「誰もができないくらい地道にやった」ことが資産形成の大きなポイントだといえよう。現在は法改正もあり貸金業そのものが営みにくくなってしまったようで数年前に新規事業をストップ、すべて回収してごく最近事業そのものをたたんだ。「会社という枠組み」をきちんと活用した希有な例ではないかという印象が強い。
もうひとつ、岡西さんが貸金業として成功したポイントがある。それは「地元の福岡に帰ったこと」だ。もっと言えば「福岡に帰って、地元の地銀と交渉し、借りられるおカネの上限にメドをつけた」こと、だった。この視点で言えば、地方銀行をうまく活用する「田舎者の発想」が岡西さんを富裕層にまで押し上げた、といえる。
東京にいると気が付きにくいことのひとつに地方銀行の活用がある。調べれば誰でもリーチできるオープン情報なので言うと、いわゆる欧米の有名なプライベートバンクも、日本の地方銀行と提携して顧客開拓を進めているケースが多い。
なぜか?
「地方銀行は地方の富裕層コンタクトを押さえているから」が答えである。ほとんどの地方富裕層は地元でなんらかの事業をやっている、しかも数代続けてやっているケースも当然多く、歴史的な経緯からも、地方富裕層と地方銀行は切っても切れない縁がある。
しかも、その付き合いの歴史はおカネの貸借関係にも大きく表れる、つまり、地方のお金持ちは地方銀行からおカネを借りやすい、という現実があるのだ。持ちつ持たれつの関係といえばそれまでだが、「地方富裕層と地方銀行」の関係性は事業承継が動きまくる激動の21世紀の貴重なインテリジェンスとして押さえておきたいところだ。
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