ポルシェのSUV「マカン」はどんな実力か この走りはまるでスポーツカーのようだ
マカン GTSは実際たいへん気持ちよく走るモデルだ。今回はサーキットからのリポートなのだが、SUVにもっとも似合わない場所と思えるサーキットにおいても、驚くほど活き活きとした走りを楽しませてくれた。SUVに伝統的なGTSのサブネームは、はったりではなかった。
では、どんなところがすごいのだろうか。
説得力のあるスーパーSUV
ポルシェ マカン GTSは、同じ3リッターV6エンジンを積むマカン Sよりパワーアップしている。吸排気系の見直しに加えてターボチャージャーの過給圧を上げることで、マカン Sの250kW(340ps)に対して265kW(360ps)と数値の上でも大きな差になっている。
操縦性は「コーナリングにおけるさらなる愉しさ」とポルシェの広報資料で謳われるとおりの仕上がりだ。1650rpmから500Nmの大トルクが出はじめる設定というだけあり、アクセルペダルに軽く足を載せるだけで、ぐんぐん速度が上がっていく感覚がまず印象的だ。サーキットの本コースへの入路でも718系のような軽さはないものの、トルクが積み重なってぐいぐいと加速していく頼もしさがある。
足まわりは硬めで、アクセルペダルを踏み込んでいくときの動きは期待以上にスポーティだ。コーナリングの挙動も不安定なところは一切ない。ボディが大きく傾くこともなくロール制御はちょうどいいところで収められている。バランスのいい上手な設定だと感心。
前のタイヤの幅が265サイズであるのに対して後ろは295サイズで、パワーをかけてのコーナリング中に外側にふくらんでいくアンダーステア傾向を打ち消す対策もとられている。それにしてもSUVで扁平率40パーセントのタイヤである。それだけ見てもマカンGTSがなんのために作られたかよく分かるではないか。オーナーの自慢にもなりそうだ。
3.6リッターV8エンジンのマカン ターボは、294kW(400ps)の出力と550Nmの大トルクで高速ツアラーとしてはいいけれど、ポルシェではマカン レンジでもっともスポーティなのは、このGTSという位置づけだ。通常は後輪駆動(場合によっては前輪に100パーセントまでトルクを移動させる)という駆動システムとともに、剛性感が高いボディはステアリングホイールの切れ角への反応もよく、SUVというよりスポーティなクーペを操縦しているような印象である。
ポルシェではカイエンにトルコン式のオートマチック変速機を用意するいっぽう、マカンにはダイレクト感が強くトルクを無駄にしないツインクラッチタイプのPDKを用意している。911に通じるようなスポーツGTとして仕上げることで、カイエンとは異なる独自のキャラクターをマカンに与えてきた。まさにこのGTSこそ“ザ・マカン”というべきだと僕は運転して思ったほどだ。
運転席の雰囲気はよく、毎日のように乗っていると、どんどん愛着が増しそうだ。いいモノ感ある雰囲気もマカンの魅力である。これ1台あれば無敵という感じだ。乗ると、ちまたのマカン人気が僕にもよく理解できた。805万円のマカン Sに対して、939万円のマカン GTS。価格差もそれなりに大きいが、説得力のあるスーパーSUVだ。
(文・小川フミオ、写真・花村英典)
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