ポルシェ「718」の4気筒ターボは何がスゴいか 新型ケイマンとボクスターが追求する走り

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もう1台、日本に上陸したばかりの718 ケイマン Sはもうひとつの驚きだった。

あらゆる領域でじつに俊敏

718 ボクスターの日本発売は2016年5月だ。もう1台、ずっと待たれていた718 ケイマンは少し遅れて、秋に路上を走り出したばかりである。

ご存知のようにケイマンはごく簡単にいうと、メタルトップつきのボクスター。リアにはハッチゲートを備えている。そもそも歴史を振り返ると初代ボクスターの登場が1996年。ボクスターが2代目にフルモデルチェンジを受けた際、2005年にケイマンが発表された。2代目になったのは2013年で、今回4気筒エンジンに換装されたのはビッグマイナーチェンジとなる。つねにボクスターが先で、ケイマンがそれに続いてきた。

ケイマンの人気が日本の市場で高いのは実用性ゆえだ。夏の日差しが強く、冬は寒い日本の気候にはメタルトップのほうが向いている(と思っているひとが多い)からだ。スタイリッシュなクーペスタイルも、大きな魅力であることは間違いない。

718 ケイマン Sはさきに触れたとおり、718 ケイマンより500cc排気量が増えた2.5リッター4気筒ターボを後車軸前に搭載している。Sと車名にあるだけあって、より高性能ぶりが特徴だ。“排気量に勝るものなし”というコンセプトは、まさにこの排気量の差が証明しているわけだが、しかしながら、3.4リッターからのダウンサイジング化による悪い影響は皆無に思える。

最高出力が従来の239kW(325ps)から257kW(350ps)へと上がったいっぽう、420Nmに増大した最大トルクは1900rpmから4500rpmのあいだで得られる。この設定もあり、じつにパワフルなのだ。静止から時速100kmに達するのに4.6秒しかかからない発進加速のするどさにも感心させられるいっぽう、あらゆる領域でじつに俊敏。スポーツカーのすぐれた操縦性を表現するとき“まるで着ているような”という常套句があるけれど、ケイマン Sの表現にはぴったりだ。

ステアリングホイールを切り込んだときの軽快な動きと、それでいてしっかり安定して感じられる車体の動きは、みごとな作り込みかただと感心するばかり。スポーツカー好きを自認するひとには、ぜひともこのケイマン Sを含めて718シリーズを試してもらいたい。ケイマン Sは6段マニュアル変速機で813万円。7段PDK(2ペダルマニュアル)で865.4万円(2016年12月現在)。Sだと(718 ボクスター Sを含めて)トルクがたっぷりあるので後者でも楽しい。

718とは1953年にポルシェが発表した水平対向4気筒エンジン搭載のスポーツレーシングカーの名前だった。550Aスパイダーの後継として、シチリア島での伝説的な公道レース、タルガフローリオをはじめ数かずのレースで優秀な成績を収めたモデルだ。こんなヘリティッジを思い出させるモデルなのである。その意味でも魅力は大きい。

(文・小川フミオ、写真・花村英典)

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