レクサス超高級クーペ「LC」は一体どんな車か これまでのトヨタ車系とは違うフィーリング

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ハンドリングもまた、アクセルワークに似て、自然で扱い易いもの。重心が常に低く感じられることも、乗り易さに繋がっている。4段の変速機、とは言ったけれども、実際にはハイブリッドシステムによる電気的な変速も組み込まれているので、疑似10段をパドルシフトで操ることもできる。

だが、そんな面倒くさいこと(つまり昔風)などせず、Dレンジのままで走れば、いつなんどきでもクルマは嫌味なくリズミカルに動き、とても乗り易い。それでいて、サーキットドライブも実にコントローラブルでキレイにまとまった。

サーキットドライブを終えて、汗ひとつかいていない自分にも驚いた。冬でもトラックテストでは脇の下に汗がにじむ程度には熱が入る。それがまるでない。ことの良し悪しは別にして、それこそがレクサス独自の走りの成果だと、確信するに至った。

もう一方、5リッターV8自然吸気エンジンを積んだLC500のほうは、まるで違うキャラクターの持ち主だった。

だったら今のうちに

当然のことながら、LC500hよりも、そうとうに速い。スポーツ+モードにしての10段ATのダイレクトな変速クリック感は古典的スポーツカー派には嬉しいものだし、パドルシフトをマニュアルで操作してのシフトダウンでは、ジャガーやマセラティを彷彿とさせる爆音ノートが響き渡る。実に操縦しやすいハイパワーFRのスポーツカーであり、サーキット走行も大いに楽しめた。

けれども、そのことがそもそも、もう古くさいと思ったのも事実だった。拘りぬいたアシ回りの設計や、強靭なボディ、そしてチューニングに細心の注意を払った10段ATで新境地を拓いてみせた、とはいうものの、LC500hに比べると、旧態然としたスポーツカーの域を脱し得ていない。レクサスらしさのある走りという評価とは無縁というべきで、それならいっそ、多少高かったとしても、欧州の名門ブランド品を買ったほうが満足度は高い、と思ってしまう。

もっとも、今、LCしかチョイスがないとして、個人的に買うとしたらどちらのグレード、と問われればV8自然吸気と答えてしまうだろう。ハイブリッドモデルは、これから益々進化する。チャンスがあれば、いつだって乗れる。

その一方で、昨今のCO2事情を考えるに、大排気量マルチシリンダー自然吸気などという“旧式な心臓”をもつクルマは、そのうち、消えてなくなる可能性が高い。だったら今のうちに、と思ってしまうのが、クルマ好きの性(サガ)というものじゃないか!

(文・西川淳)

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