アンジェリーナ・ジョリーという生きかた 誰も彼女の決断を遮ることはできない
ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの離婚申請に世界が沸いた。泥沼の親権争いが予測されるなか、小田嶋隆は彼女について考えてみた。
離婚のニュースに驚かなかった
ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが離婚するらしい、というニュースを聞いた時、私は、驚かなかった。
驚かなかった理由の半分は、どうせまたウソだろうと思ったからだ。この、おそらく世界で一番有名なカップルは、結婚する以前から、あらゆるタイプの無責任なゴシップにさらされてきた。そしてそれらの風聞のほとんどは、根拠となるファクトすら特定されていない、まるっきりのデマだった。とすれば、今回の噂もまた、誰かが二日酔いの果ての妄想を記事にしただけの戯言なのであろうと私が決めつけていけない理由は無い。
とはいうものの、私が離婚のニュースにびっくりしなかった残りの半分の理由は、ぶっちゃけて言えば、相手がアンジーだったからだ。この人に関してこの数年伝えらてくる新しい情報は、やれ乳がんを予防するためにあらかじめ乳房を切除したであるとか、体重が35キロを切っているだとか、体中にタトゥーを入れたぞであるとか、とにかくびっくりさせられるお話ばかりだった。それゆえ、聞かされる側としても、そうそう毎度毎度真正直にびっくらこいているわけにも参らぬわけで、「えっ? アンジーが?」と、その名前を聞いた時には、既にびっくりしないための覚悟を固めにかかっている次第なのだ。
どんな方向にであれ、突然の変心は、この女性の通常進行だ。離婚であれ引退であれ仏門に入るのであれ選挙に立候補するのであれ、とにかく、アンジェリーナは、ある朝突然何かを始め、何かを断念する。あるいは、身体のどこかを切除し、養子を迎え、巨額の寄付金を送り、何をするのであれ、観察者の予断を裏切るカタチでそれらを貫徹する。誰も彼女の決断を遮ることはできない。なんと明快で痛ましい女性ではないか。