「患者に高圧的な医者」がはびこる根本理由

原始の医療からたどる医者と患者の関係

また、“先生にすべてお任せします”と、父のように頼れる医師像を求める患者もいます。そして、その期待に応えようとする医師が存在するのです。

呪術を担う医師は、神の代理人として患者と神を仲介する役割をもちます。父親としての医師は、合理的な知恵を集積した父親としてふるまいます。科学の知識と技術を教育された医師は、科学者・研究者として最新の医学を適用とします。保険の医療受託執行人としての医師は、社会の中で認められた保険医療を行うことを委託され、その範囲内で受託されている医療を提供します。

「父親的な医者」に身を委ねたい患者もいる

呪術師、父親、科学者・研究者、保健医療の受託執行人――。どの役割だからいい、悪い、ということではなく、それぞれの役割意識でも、良い方向に働けばうまく機能します。

呪術者としての医師は、どんな病気であっても患者が頼ってくれば治してあげようと術を施し、最後に頼るのは神仏という患者の期待に応えようとします。どんな病気でも魔法をかけたように治してもらう、奇跡をおこしてもらう、そんな期待が患者の側にはあります。

よき父親役としての医師は、医学の知恵を十分に蓄積した専門家として、患者にとって最も良いだろうと判断した治療を施します。患者はその行為を頼もしく感じ、専門家に安心をして身を委ねます。医学の難しいことはよく解らないし、調べたいとも思わないけれど、とりあえず有名な病院の有名な医師に、あるいは近所で評判の良い医師にかかっていれば安心だろうと考える患者がいます。

科学者としての医師は、科学的手法に基づいて得られた証拠(エビデンス)に支えられた医療を提供します。患者は急速に進歩した近代医学の恩恵をうけることができます。例えば、わたしが専門とする肝臓の分野では、難病、C型肝炎に対する画期的な抗ウイルス薬が開発され、医学がもたらす恩恵は本当にすばらしいと感じています。ほとんどこれといった副作用もなく、1日1回クスリを飲むだけで、ほぼ100%に近い確率で肝炎ウイルスが消えてしまうのですから。

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