トランプ政権で「アメリカは日本化する」のか

シリコンバレーに忍び寄る「衰退」の影

また、地域的には、これまでは米国のシリコンバレーが、IT産業の象徴的な存在であった。しかし米国出張では、「シリコンバレーはもうおしまいだ」、との意見を多々聞いた。確かに、シリコンバレーにITベンチャーが押し寄せた結果、不動産価格が高騰してオフィスの賃貸料も従業員の住宅コストも高くなっており、交通渋滞もひどくなりつつあるという話は日本でも良く耳にした。だが、米国の識者がここまで深刻に考えているのにはいささか驚いた。

ITの技術者も取り合いになったため、賃金コストも他地域よりも高くなってしまった。このため、「優秀な若いベンチャー企業がシリコンバレーで創業しようとしても、かなり難しくなっている」という。結果としてシリコンバレーに残っているのは、成長したあとの大企業が多くなり、組織が官僚化して決断が遅く、業界の最先端を行く情報が入りにくくなっている、というわけだ。

なぜ再びニューヨークが注目を浴びているのか

では、今はどの地域が注目されているかというと、意外にもニューヨークなどの地域だという。多くのIT企業は、もう技術そのものの開発というより、ユーザー(消費者や企業など)のニーズをつかむことが大切で、そのためにはニューヨークのような、大きな経済地域に拠点を置くべきだ、との見解が主流になっているようだ。

またニューヨークは、たとえば米国の中西部などと比べると、人種構成が多様で、さまざまな異なるエスニックグループのニーズが把握できる。また世界中から観光客が押し寄せているため、外国人が何を欲しているかもつかみやすい。ニューヨークでの成功を足掛かりに、アジアやヨーロッパなど、他国に打って出ることができる、との声も聞いた。

筆者がニューヨーク市内を回っている間に、ソーホー地区(ブランドショップなどが多い)で、グーグルの店舗(Made by Google)を見つけた。これは10月にオープンしたばかりで、何かを売っているわけではなく、グーグルが提供する機能を紹介するものだ。

またフェイスブックは、Facebook Virtual Reality Roadshow と称して、全米をぐるりと回ってVRを紹介するブースを設けているが、先週はニューヨークのブライアントパークにブースがあった。このように、グーグルやフェイスブックは、技術開発だけではなく、ユーザーニーズの把握や、ユーザーへ機能を紹介するというアプローチに重点を置き始め、ニューヨークでの活動を重視し始めている。日本企業でも、食べログ(カカクコムグループ)は、米国進出の拠点として、シリコンバレーを検討はしたものの、結局ニューヨークを選択したとのことだ。

このように、企業間、地域間での健全な競争、切磋琢磨を経て、個々には栄枯盛衰がありながらも、米国産業・民間企業全体としては、着実な成長を遂げていくのだろう。それが米国経済・米国株式市場の、根本的な強さでもある。

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