さて、筆者は先週、ワシントンDCおよびニューヨークに出張してきた。現地での取材内容は多岐にわたった(米国の政治経済、今後の新政権の諸政策、米国株式・債券・米ドル市場の今後、米国を中心とした国際金融情勢、年金・ヘッジファンドなど米国投資家の日本株への投資姿勢などなど)が、それぞれの取材成果は、当方のメールマガジンやマスコミ出演時の話などで、少しずつ披露しつつあるので、詳しくはそちらを参考にされたい。
現地の複数の識者の指摘で特に印象に残ったのは、トランプ新政権がとると見込まれる経済政策の危うさだ。トランプ氏は、大幅な減税やインフラ投資の拡大を行なう方針だが、それは需要を一時的に刺激するに過ぎない、アメ(カンフル剤)だという批判だ。
米国企業の競争力を高める策ではなく、むしろ保護貿易主義、TPPからの脱退や、場合によっては中国からの輸出品に対する高関税、米ドル高けん制などにより、努力しない国内企業を甘やかし、世界を舞台に堂々と戦おうという企業の自助努力をくじくといった、長期的に米企業を弱体化させる政策だ、との懸念がささやかれている。
このため、今後の米国景気については、2017年は需要刺激策で一時的に持ち上がっても、カンフル剤の効果が薄らいでいくことで、2018年にはかえってリセッションに陥るのではないか、との予想も多く聞いた。
もし、財政の大盤振る舞いで一時的に需要が刺激されても、競争力の強化につながらず、結局残ったのは財政赤字の拡大だけとなれば、そうした現象は、実はかつての日本で起こったことだ。「トランプ政権の経済政策は、『アメリカの日本化』ではないか」との指摘は、耳が痛かった。
それでも「米国企業の厳しい生存競争」は健在
しかし、最終的に米国経済・産業界が完全に日本化するかと言えば、そうではなく、期待できる点があると考えている。そもそも米国企業には政府に頼ろうという姿勢は乏しい。勝ち得た地位に安住せず、常に前向きな変化を求めて、切磋琢磨している。その結果、個々の企業においては、競争に敗れ、消えるものもあるが、厳しい生存競争を通じて、米産業界全体としては強くなっていると言える。
たとえば日本でも著名な企業ツイッターは、ひところはIT業界の寵児であったが、今は身売りがささやかれている。一方、それに取って代わろうと、新しいベンチャー企業が次々と創業されている。
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