「夢の印税生活」のそんなに甘くない現実

ビジネス書作家の多くは執筆のみで食えない

印税収入は、本の刷り部数×定価×印税率だったので、検印は作家にとっては意味があった。しかし、刷り部数が数千部単位になると、実際は作家のハンコを出版社が借りて、さらにそのハンコを製本所が借りて、作家の代わりに押していたようである。

結局、事実上、有名無実となったので、いまでは検印省略が当たり前となっている。

印税相場の移り変わり

どうやら世間では、印税というと、一律に決まっているように思われているようだ(おそらく税という字から連想するのだろう)。しかし実際は、必ずしもそうではない。

印税には、「刷り部数印税」と「実売印税」がある。

どちらのシステムが多いのかは、正直にいうとわからない。私が付き合いのある出版社で、現在、実売印税の出版社は一社もないが、かつて実売印税だったという会社は二社ある。したがって、いまのところは恐らく刷り部数印税の会社のほうが多いだろう。

刷り部数印税とは、「発行部数(印刷部数)×定価×印税率」で計算する。一方、実売部数とは、「発行部数から返品等の在庫分を差し引いた数×定価×印税率」で算出する。

刷り部数は返品があっても印税が減ることはないが、実売部数では発行部数から返品部数を差し引いて算出する。よって、もし印税率が同じであったなら、表面上は、刷り部数印税は作家に有利で、実売部数印税は出版社に有利ということもできる。

やや露骨な言い方をすれば、刷り部数印税では出版社が返品のリスクを背負い、実売印税ではリスクの一部を作家に移転しているということである。

印税率も一律ではない。20年前であれば、だいたい一律10%といえた。しかし、今日「印税は一律10%です」という出版社は数えるほどしかない。中には5%という印税率の会社もある。

印税率が減少している理由は、はっきりいって出版界の斜陽にある。本が売れないから、出版社は経費である作家への報酬、印税率を下げているのは明らかだ。

さすがに5%以下という条件はいままで聞いたことはないが、7%、8%という印税率の出版社は珍しくない。10%の印税率を基本にしている会社でも、何か付録を付けるようなお金のかかる本づくりをした場合には、制作費がかかる分、印税率を下げて調整するという場合もある。

では、作家にとっては印税率が高くて、刷り部数印税の出版社のほうがよい版元かというと、そうではない。質のよい本をつくって、たくさん売ることができる出版社が、やはり作家にとってもよい版元なのである。

(文:ミスターX/出版プロデューサー)

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