質問者の方が今後のキャリアを考えるにあたっての次の問いは、「電話をかけられるシンガポール人のビジネスマンが何人いるか?」です。特にアドバイザーやコンサルタント業務であれば、質問者の方が5年間いらしたシンガポールでのネットワークや知見にクライアントは期待するでしょうし、事業法人の事業開発担当なども同様でしょう。
シンガポールにおける日本の財閥系金融機関を頂点とする日本人コミュニティでのネットワーキングも、昨今、各社がエース級人材を配置していることから、もちろん重要ではあります(特に帰国後)。しかし、その一方で日本人コミュニティだけでなく、シンガポール政府当局や、ソブリンウエルスファンドのTやらGやら、NUS(シンガポール国立大学)出身者のネットワーク、華僑ネットワークにアクセスできることは非常に大きな付加価値となります。
ちなみに筆者の元同僚がソブリンウエルスファンドで働いていたので、日本人でも就職はできるようです。もしも質問者の方が、上記のようなネットワークをすでにお持ちであれば、それは非常に大きな「ウリ」となります。
日系企業がつねに欲する人材
次にニーズ側からの整理ですが、筆者の知るかぎり、日系企業の経営者がつねに欲しており、人材市場で枯渇している人材は、「製品やサービスを海外に持っていき、現地での戦略的提携もからめつつ、事業を立ち上げてくれる人材」です。
こうした業務に必要なスキルは、交渉可能なレベルの語学力、契約レビューができる法的知識、事業計画作成スキル、現地の規制や商習慣の知見、人材マネジメント力となります。こうしたスキルの必要性は日本政府内における問題意識でもあります。このようなスキルを全部一人で持っていたらウイザード級ですが、こうしたスキルが多いほど、企業には必要とされますし、まさに事業開発という経営の一翼を担うことができます。
ちなみに思いっきり相性の問題がありますが、こうしたスキルを持ってオーナー系企業の海外展開や事業開発を担うのは、とてもやりがいがあると思います。
質問者の方は「コンサルタントになるか、M&Aのアドバイザーなどをやるか」と悩まれているようですが、今までのキャリアやご年齢を考えるとコンサルタントやアドバイザーはお勧めしません。
どこかのファームに入るのであれば、30代後半ではすでにクライアントを持っていることやプロジェクトマネジメント経験が求められますし、必要なスキルが営業力にシフトしているのがこの年齢です。20代でプロフェッショナルファームを経験せずに、今の年齢から下働きをすることは、これからのキャリアを考えるとあまり意味がありません。
もし社内でM&Aのディールマネジメントをしたご経験が10本くらいあれば、商社や事業会社の社内M&A担当者にアプライすることもできますが、それよりはファンドや事業法人の投資先で数字のわかる経営者としての道を探ったほうが、経営に近くてよいかと思います。または事業会社における事業開発担当者といった軸でしょう。
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