ヤマト、企業物流の取り込みに本腰 国内主要都市間は当日、アジアに最短翌日配達へ

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バリューネットワーキング構想を発表する木川眞・ヤマトホールディングス社長(右) (撮影: 大澤 誠)

一方、沖縄国際物流ハブを活用して本格稼働するのがアジア向け「国際宅急便」事業だ。ヤマトホールディングスと全日本空輸の事業提携により実現したもので、アジア圏で最短翌日配達を初めて可能にした。昨年11月に通関免許を取得した「沖縄ヤマト運輸」が24時間通関を実現し、第1弾として昨年11月から書類の取り扱いを開始。今年5月には小口荷物の最短翌日配達もスタートし、書類のほか、25キログラム以下の小口荷物なら、香港・台湾・上海向けに最短翌日配達が可能となった。日本各地からの荷物を深夜に沖縄へ輸送し、翌日に空輸しアジア各地のヤマトグループ関係の配達網に乗せて届ける。

クール宅急便のアジア向け翌日配送は世界初

年内には世界で初めて、クール宅急便のアジア向け翌日配達の取り扱いも始める予定。日本発の生鮮食品・農産物輸出の場合、時間を要する検疫・放射能検査が必要。この作業をスムーズに進めるための交渉を現在、各国・地域の政府当局者と調整中だ。年内には第一弾として、香港向けの取り扱いが開始されるという。

厚木ゲートウェイ

国内では、主要都市間での宅急便の当日配達を実現する取り組みに乗り出す。第一弾となる首都圏の拠点、「厚木ゲートウェイ」が神奈川県愛川町に完成、8月11日から稼働する。まずは首都圏企業発の荷物の当日配達の運用を開始していく。ヤマトホールディングスでは、2015年度までに愛知県豊田市内に中部圏の拠点、16年度までに近畿圏にも厚木と同様の大型ゲートウェイを建設する計画で、東名阪3拠点を軸に主要都市間の当日配達が可能となる。

総延べ床面積が約9万平方mある厚木ゲートウェイの投資額は約200億円。中部・近畿圏の各拠点の投資額もほぼ同額程度とみられる。東京-大阪間の配達は、現在、全国に約70ある各地域のハブ拠点間で輸送し合い、仕向け地の拠点には深夜に輸送し翌日に配達している。この拠点間輸送を深夜だけではなく24時間体制で3つのゲートウェイ間を大量輸送する仕組みにすれば、荷物が倉庫内に滞留する時間とコストを大幅に縮小でき、3大都市間の当日配達が可能になるという。

ヤマトホールディングスでは、このバリューネットワーキング構想を、配達スピードが求められる中小のネット通販業向けや、ジャストインタイムに納入が必要な製造・流通業向けなどに提案していく意向だ。

鈴木 雅幸 東洋経済 記者

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すずき まさゆき / Masayuki Suzuki
2001年東洋経済新報社入社。2005年『週刊東洋経済』副編集長を経て、2008年7月~2010年9月、2012年4月~9月に同誌編集長を務めた。2012年10月証券部長、2013年10月メディア編集部長、2014年10月会社四季報編集部長。2015年10月デジタルメディア局東洋経済オンライン編集部長(編集局次長兼務)。2016年10月編集局長。2019年1月会社四季報センター長、2020年10月から報道センター長。
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