「切れキャラ」加藤浩次がMCに選ばれたワケ 元プロデューサーと語る「スッキリ!!」の裏側

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加藤:僕は子どもの頃から、人がもめていたりするのがけっこう好きなんです。だから、もめごとに直面すると、「お前はどう思っているんだ」と聞いては、「じゃあ、もうひとりの当事者も呼ぶか」と裁定役をやっていました。

三枝:火中の栗を拾いにいけるタイプは、MC向きですね。

加藤:まあ、火に油をそそぐ場合も多いんですけどね(笑)。

三枝:根っからの裁きグセがあると。

加藤:間に立つのが、好きなんですよ。

三枝:加藤さんは、人の話を聴くのも嫌いじゃないですよね。僕は、MCに最も必要なのは、人の意見を「よく聴く」ことだと思っているんです。もっと言うと、社会人にいちばん必要とされる資質かもしれない。「聴く」ことが、すべての物事を理解するスタートですから。

加藤:確かに、話すよりもむしろ聴くほうが好きですね。

三枝:ある意見に対して、「それって、こうなんじゃないの?」と深く掘っていくのが好きでもあって。

加藤:そうです。だから、本番中にテリーさんと勝谷さんがもめて収拾がつかなくなっても、どこかでそれを楽しんでいる、ワクワクしている僕がいて。「勝谷さん、それはどうなんですか? 僕はテリーさんの言うとおりだと思いますけどね」と言う時もありましたし、その逆もありました。

自分をよく見せようとしない

三枝:普通のアナウンサーだったら怖くて仲裁にいけない。そこは加藤さんのような個性がある人が入ることで、もう一段深い話で盛り上がる。そこに加藤さんがMCをやる意味がある。

加藤:そう言っていただけると嬉しいですけどね。

三枝:進行だけならば別に……。

加藤:アナウンサーのほうがうまいですし、声も綺麗ですしね。

三枝:聞きやすいですから。加藤さんがMCを始めた当初よく言われたのが「言葉が聞き取りづらい」でしたね。ボイストレーニングはしているんですか?

加藤:いっさいしていないです。いい声を出そうとした時点で、自分をよく見せようとしていることなので、僕の考え方にはそぐわないんですよ。僕が綺麗な声を出そうと一生懸命だと気持ち悪くないですか(笑)。お前、なんでそっちに寄ってるんだよってね。

三枝:地声は変えようがないから、そこは開き直っていると。自分を大きく見せようとしない「等身大の加藤浩次」のままでいるのが、加藤さんのいいところなのかなと思います。

加藤:声の質は敵わないので、そこはアナウンサーに任せて。僕のしゃべりに感情が乗ったほうがいいし、感情が乗っていないと意味がないと思っています。

三枝:美しい声で進行する人間は横に置いて、加藤さんが自由に動けるようにするのが大事ですよね。MCが自由に動けたほうが、今の時代には合っていると思うんです。

<後編に続く>

(構成:高杉 公秀、撮影:梅谷 秀司)

加藤 浩次 芸人

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かとう こうじ / Koji Kato

1969年北海道生まれ。1989年山本圭壱とお笑いコンビ「極楽とんぼ」を結成。現在、『スッキリ‼』(日本テレビ系)『がっちりマンデー‼』『スーパーサッカー』(共にTBS系)など、さまざまな番組のMCとして活躍するほか、芸人、俳優を多方面で活躍中。私生活では愛妻家であり、3人の子を持つパパとしても知られる。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。

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三枝 孝臣 コンテンツプロデューサー

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さえぐさ たかおみ / Takaomi Saegusa

1966年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。1989年日本テレビ入社。「ZIP!」「スッキリ!!」「シューイチ」を日テレの看板番組に育て上げた敏腕プロデューサー。バラエティ番組からドラマまで、手掛けた番組は100を超える。2015年に日本テレビを独立。新たにメディアデザイン事業会社「アブリオ」を設立するとともに、LINEの前社長・森川亮氏と「C Channel株式会社」を立ち上げ取締役に就任。現在、メディアの枠を超えてヒット作品を世に送り出し続けるコンテンツプロデューサーとして活躍している。著書に『一流のMC力』(東洋経済新報社)がある。

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