欧州式で本当に育児時短問題を解決できるか ガラパゴス化している、日本の女性活用【第5回】

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さて、一般的に長期の育休や時短勤務が機能している多くの欧州諸国では、以下のような特徴がある。

① 残業がない(毎日定時退社)

② つねに誰かが休暇を取っている

③ 同一価値労働同一賃金

④ 成果に基づく評価制度

⑤ 日本と違い、「仕事」より「生活」が重要という価値観が根底にあり、実践

パリでの買い物は「日曜日はだめよ」

たとえば、世界一観光客数が多い国であるフランスの首都パリで、皆さんが日曜にいたとしても、残念ながらショッピングはほとんどできない。土産屋は開いているところもあるが、街の片隅の小さな店からオペラ座にあるプランタン百貨店まで、ほとんどの店が閉まっているのだ。

旅行日程により日曜しか買い物ができない外国人観光客も多くいる中、もしパリの小売店が日曜営業をしていれば、どれくらい売り上げや国のGDPが増えるだろう。

日本では日曜は人々がゆっくりと買い物をする日、店にとっては稼ぎ時、というのが一般的だ。だが、フランスに限らず、多くの欧州諸国では、原則的に日曜祝日は店を閉めて働かない。宗教的な理由などから国が営業制限しているのだが、欧州人にとって「おカネより休み」「ワークよりライフ」。家族と自分の時間が大切で、「日曜は家族で過ごす日、教会に行く日」なのである。
大切な人と過ごすことや自分のための時間と休暇に人生の優先順位を置き、その価値観に沿う働き方を実践することで、欧州では自然と時短勤務や育休が支障なく適応できる土壌と価値観が根付いているのだ。

つまり、働き方を柔軟にすることは、単に制度を導入すればうまくいく、という単純なものではなく、それなりの前提条件が必要となる。欧州では社会全体が「生活を重視する価値観」を持っていることはそのひとつと言える。

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