統合は死んだ、だがEUは生きている

国家でも単なる国際機関でもない、等身大のEUとは?

主要8か国首脳会議が17日、英国・北アイルランドのロックアーンで開幕した。議題の1つは、米国経済に比べて、回復の遅れが目立つ欧州経済だ。そこで、今回はEUの専門家でこのほど新著も出した遠藤乾・北海道大学教授に、EUの未来について、寄稿してもらった。

連邦国家を目指すヨーロッパ統合は終わった。けれども、そのポスト統合をEUはしっかり生きている。

そのEUについては、あるときに欧州合衆国の誕生が謳われたかと思うと、またあるときにはユーロ危機の最中のように瓦解が語られる。しかし、メディア上で乱高下する評価から卒業して、そろそろ等身大のEUを見つめ直す時期が来ているのではなかろうか。それは、国家でもなく、単なる国際機関でもない独特の存在であり、それゆえに不安定に見られがちだが、その二つのイメージの谷間で十分に安定し、存続している。

毀誉褒貶の激しいEU

時計の針を少し巻き戻そう。1990年代初頭、マーストリヒト条約が締結され、その批准過程がデンマークの国民投票による否決とともに混乱したころ、ちょうど通貨危機にも襲われた当時のECの評判は「地に落ちていた」(The Economist, 7 August 1993)。それに乗じたわけではなかろうが、浜矩子氏(現・同志社大学大学院教授)は1994年に『分裂する欧州経済―EU崩壊の構図』(日本経済新聞社)を執筆する。そこでは、EUは分裂の危機にあり、崩壊のリスクを抱えるとされた。しかしながら、危機のたびにこうして崩壊が語られるEUはその後も集権化を進め、存在し続けている。この事実はどのように説明されるのだろうか。

問題はそこにとどまらない。というのも、浜氏は現在に至るまでEU崩壊論で一貫しており、その点に限り筆者は評価すらしているが、EU統合が順調だと欧州合衆国の到来だと持ち上げ、それが問題化すると瓦解のリスクを語る論者は後を絶たない。

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