まさかの復活。日の丸液晶の大勝負 社運を懸けたスマホ液晶の増産投資は吉と出るか

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「統合後に各社の技術を見比べて、こんなことができるのかと技術者同士で驚きの声が上がることもあった」(同社幹部)。低消費電力の液晶パネルを開発し、有機ELの技術開発にメドをつけるなど成果は上々だ。

茂原工場がたどってきた道のりは平坦でなかった。新ラインは、パナソニックから買い取ったテレビ用液晶パネル工場を改造した。そもそもは東芝と日立、松下電器産業(当時)が共同出資した工場を2010年にパナソニックが完全子会社化したものだ。一時はキヤノンが子会社化する予定だったが、それも頓挫。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業への売却交渉が浮上したこともある。稼働率が低迷する中、最終的にジャパンディスプレイが買い取った経緯がある。

まさかの復活ぶり

そんな紆余曲折を吹き飛ばすかのように、茂原工場は息を吹き返しつつある。スマホ用パネルは需給が逼迫しており、足元はフル稼働。製造部門では約400人の採用を見込む。技術はあるがカネはなく、親会社に翻弄されてきた過去を振り返ると、まさかの復活ぶりである。

問題は持続力だ。昨年6月には能見工場(石川)で新ラインが稼働した。が、昨年末ごろは主要顧客である米アップルからの受注減少に悩まされ、新規顧客で穴埋めして何とか切り抜けた。現在は大手スマホメーカーをはじめ、中国などの中堅メーカーの取り込みにも成功している。

同社が得意とする高精細な中小型液晶は量産が難しく、台湾や中国のメーカーは追随できていない。一方でスマホやタブレットのメーカーは、軒並みアイフォーンやアイパッド並みの高価な液晶パネルを求めているという。「低価格スマホ向けのビジネスはしない」(同社幹部)と高級路線にこだわる戦略は、今のところ奏功している。

しかし、恐ろしいスピードで変化するのが、モバイルデバイスの世界。激安スマホが世界を席巻すれば、たちまちそっぽを向かれて稼働率が低下するおそれがある。台湾や中国のパネルメーカーが技術力をつけて量産攻勢を仕掛けてくれば、熾烈な価格競争が待っている。

希望と不安を抱え、走り出した日の丸液晶会社。税金が入っている以上、もう負けは許されない。

(撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2013年6月15日

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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