年間約10兆円!薬剤費の膨張を止められるか あの手この手で無駄をなくせ

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
社会問題化している多剤投与を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか(写真 :stpure / PIXTA)

年間40兆円を超える国民医療費のうち、約2割を占めるのが薬剤費。医療費全体を上回るペースで伸びている。放置して大丈夫か。

宇都宮市にある国立病院機構栃木医療センターで内科医長を務める矢吹拓さんがこの日訪れたのは、畑違いの整形外科病棟。骨折で入院した80代の患者に、こう声をかけた。

「血圧が100を切っていますね。お薬が効いているようですが、あまり下げすぎても転ぶ危険があるので、ちょっと減らしてみましょうか」

矢吹さんはこのとき、「ポリファーマシー外来」での役割を果たしていた。2015年1月に全国で初めてつくられたチームだ。ポリファーマシーは、英語で「多くの」を意味するpolyと、「薬」のpharmacyを組み合わせた造語で、高齢者を中心に社会問題化している多剤投与を防ぐのが目的だ。

「多剤」に苦しむ高齢者

同センターに1週間以上入院する見込みで、5種類以上の内服薬を処方されている高齢者(65歳以上)の中から希望者が受診できる。5種類を超えると、組み合わせの問題などでふらつき、認知機能の低下などが生じやすいとされるためだ。

時には複数にわたるセンター内外の主治医から情報提供を受けたうえで、チームの内科医たちが、入院中の患者の病歴や診察所見、検査値などと照らし合わせながら、本当に必要な薬はどれか、整理していく。

次ページそのきっかけとは?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事