年間約10兆円!薬剤費の膨張を止められるか あの手この手で無駄をなくせ

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政府は、18年度から20年度末までのなるべく早い時期に、後発品があって代替可能な薬剤のうち、後発品のシェアを数量ベースで80%にし、国民医療費を年間で約1兆3千億円削減することをめざす。

後発品シェアはすでに56%に達している。ジェネリックが普及した理由の一つが、10年前から始まった処方箋(せん)の様式の変更と、処方する医師や調剤する薬局への診療報酬上の加算だ。

以前の方式では、医師は処方箋に薬の「商品名」を書き、患者はその通りの薬しか受け取れなかった。しかし06年からは、先発品の商品名で処方された場合も、医師が処方箋に「後発品への変更可」のチェックをすれば、薬局で後発品に変更できるようになった。

さらに08年からは、後発品への変更に差し支えがあると医師が判断した場合に医師がサインするやり方に改定。12年からは、一つひとつの薬剤ごとに「変更不可」欄にチェックを入れなければならない方式になるなど、一貫してジェネリックへの切り替えを促す制度改正が続いてきた。ただ、いずれの場合も、後発品に変更するかどうかは、薬剤師が患者に十分な説明をして、同意を得た場合に限られる。

後発品が安いのは間違いないが、効果や安全性への不安を持つ患者は依然としている。先発品と後発品は、有効成分(原薬)は同一だが、成型などを目的に加えられる賦形剤やコーティング剤、着色剤などの添加物まで一緒とは限らない。例えば、色素に過敏反応を示すかもしれない人は、ジェネリックに替えるには慎重さが求められるだろう。

とはいえ、アレルギー症状が起きるかは体質の問題であって、先発品だから安全とは言えない。先発品は発売前、多くて約1千人規模の臨床試験で、効果と安全性が確認されたにすぎず、市販後に未知の副作用が判明する可能性がないとは言えない。後発品は、発売から特許が切れるまでの間、多くの患者に使われた実績のある先発品に基づいて製造されており、予期せぬ副作用の可能性は低いと考えられる。

実際には、先発品も含めて原薬は輸入品が多く、先発品と後発品が同じ製造ラインで生産されている例もあるという。

日本大学薬学部の亀井美和子教授は、「後発品だけを特段不安に思う理由はない」と語る。

さらに近年、注目を集めているのが「オーソライズドジェネリック」だ。後発品メーカーが、先発品メーカーから独占的に許可を得て、原薬はもちろん、使う添加物も製法も全く同じで、いわば同一の医薬品を製造する。現在、抗アレルギー薬や降圧薬などで14銘柄が市販され、通常のジェネリックに比べ価格差は小さいものの、先発品よりは低い価格で市場での存在感を強めている。

先発品しのぐ後発品も

「スーパージェネリック」、または「アドバンストジェネリック」と呼ばれる後発品も登場した。後発であることを生かし、服用のしやすさや容器の改良などで先発品に付加価値をつけた薬のことだ。例えば、子どもにも飲みやすくするよう、苦みを抑えてフレーバーを加えたり、錠剤をラムネのような口腔内崩壊錠にして、水がなくても飲めるようにしたりする。飲み間違いを防ぐために、表示を見やすく改良したものも登場している。

国民は、自己負担額の増加や保険料の引き上げに抵抗感が強い。一方、薬価の引き下げについては製薬企業や医療従事者の賛同が得られにくい。そんな対立構造にはまらないために、従来のやり方にとらわれて温存された「無駄」を、柔軟な発想でなくすよう、誰もが積極的に取り組むべきだろう。

(ジャーナリスト・塚崎朝子)

※AERA 2016年11月7日号

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