マイナス金利で日本は「空き家だらけ」になる 日本は構造改革できず再びバブルがはじける

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三井:日銀の金融政策はやはり限界に達しているのでしょうか?

中原:黒田総裁は心のうちでは「もうダメだ」と思っているはずです。日銀は大幅な金融政策の見直しによって、国債の購入を3%程度減らす予定とはいえ、それでも今のペースで量的緩和の継続をするのは、せいぜいあと2年が限界だろうと思われます。

そのうえ、マイナス金利の副作用がじわじわと日本経済をむしばみ始めています。銀行の収益が利ザヤの縮小により悪化するのは当然として、運用が困難な状況に陥ることで年金制度が危機に陥ろうとしています。ただでさえ国民には年金不安があるというのに、運用の不振により年金不安はいっそう高まり、それは日本人の貯蓄性向をより高める結果になっているのです。おまけに、マイナス金利に伴う超低金利の進行は、投資マネーを必要以上に株式や不動産などに向かわせ、それらの需給関係をゆがめることにもつながっています。不健全な需要が資産価格をつり上げた後、供給過多が明らかになるにしたがい、最終的には価格の長期低迷が避けられなくなるからです。

マイナス金利は「愚かな金融政策」

三井:黒田総裁がマイナス金利の主な効果として貸家の増加を挙げているのを聞いて、私も「それは違う」と思ったのですが、やっぱりその感覚は間違っていませんよね?

中原:間違っていません。所有する土地に貸家を建てて相続税の評価額を下げるという節税法はよく知られていますが、2015年1月に相続税の増税がなされたことに加え、日銀のマイナス金利政策で借金を容易にできるようになったため、貸家の建設に拍車がかかっています。すでに全国で820万戸の空き家があり、その半数以上は貸家となっているのです。人口減少社会が到来した日本では、ただでさえ今後も空き家が増えていくというのに、今のようなペースで貸家の供給が進むことになれば、さらに空き家が増えて家賃が大幅に下がることになるでしょう。将来の需要と供給のバランスを考えると、アパート・マンションの建設ペースは明らかにバブルの状況にあるといえるわけです。

三井:つまり、黒田総裁は「副作用」を「効果」と偽っているのですね。

中原:そのとおりです。マイナス金利は経済全体で見れば明らかに副作用のほうが多く、愚かな金融政策というほかありません。現代の経済システムは、金利が必ずプラスになるという前提で構築されているはずです。その証左として、マイナス金利はまったく想定されていなかったためか、まだ8カ月が過ぎたばかりだというのに、すでに銀行や年金、市場などに多大な損失を与え始めているのです。これからは数々の副作用が相互に作用し合って、経済全体をいっそう危ない方向へと導いてしまうのではないか、非常に心配しているところです。

三井:黒田総裁は玉砕も覚悟のうえということですか?

中原:いいえ。黒田総裁は玉砕前に任期満了となります。どこかで量的緩和とマイナス金利を止めなければならないわけですが、それは黒田総裁が辞めた後に、新しい総裁が決断することになるのではないでしょうか。

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