ヒラリーは「大波」を起こせるかもしれない 上院・下院選挙にも注目すべき理由

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はたして今回は、大波選挙となるのだろうか。

現在、上院選挙をめぐっては民主党の勢いが増している。ウィスコンシン州では、6年前に僅差で破れた前職のラス・ファインゴールド氏(民主)が、現職のロン・ジョンソン氏(共和)に雪辱を果たすことが確実視されている。イリノイ州でも共和党は、失言癖のある現職のマーク・カーク議員を実質的に見限っている。

ニューハンプシャー州やネバダ州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州などでも、トランプ氏の女性蔑視発言を受け、議会選挙では民主党が接戦に持ち込む形勢となっている。

トランプ氏と共和党の大統領候補指名を争ったマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)は当選確実とされてきたが、ここにきて勢いは弱まっているようだ。同じく共和党で、当選確実と目されてきたアリゾナ州選出のジョン・マケイン上院議員も、足元をすくわれる可能性がある。

下院でのハードルは高いままだ

しかし、下院で民主党が勝利するハードルはまだ高い。仮にクリントン氏が大統領選に勝利し、民主党が上院で過半数を占めても、共和党は下院で議事妨害して大統領の政治日程を束縛することができる。

共和党が下院での過半数を維持した場合、2020年の大統領選での共和党指名獲得を視野に入れているポール・ライアン下院議長が、その手腕を見せつけるため新大統領と部分的に協力する可能性がある。しかし、非常に保守的な下院の共和党議員団は、これに反旗をひるがえすだろう。

定員9人の最高裁判所裁判官も依然、8人のままだ。この数のままだと、重要な司法判断で意見が半分に割れてしまう恐れがある。保守派だったアントニン・スカリア判事が2月に死去した後、共和党はオバマ大統領が提案したリベラル派のメリック・ガーランド氏の最高裁判事就任を阻んできた。民主党が上院で過半数を取ったとしても、共和党がクリントン氏の推す判事候補の指名を阻止し続ける可能性は残る。

このように考えると、大統領選と議会選挙を経ても米国政治の停滞解消にはまだ時間がかかりそうだ。

週刊東洋経済11月5日号

エリザベス・ドリュー ジャーナリスト

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エリザベス・ドリュー / Elizabeth Drew

近著に『ウォーターゲート事件とニクソン失脚に関するリポート』がある

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