世界中が米大統領選挙に注目する中、同時に実施される米議会選挙での上院・下院の支配権争いが見過ごされている感がある。同議会選挙の結果は、次期大統領の政権運営を左右する可能性がある。
米国議会の上院は定員100人で、条約批准や大統領の人事指名、立法の可否を決める。一方の下院は定員435人で、上院ほどの権能はない。ホワイトハウスと上下両院とを同じ党が支配することになれば、ここ数年間続いた米国政治の停滞は解消に近づくことになる。
トランプ女性蔑視発言の「効用」
ワシントン・ボストが11年前のドナルド・トランプ共和党大統領候補による女性蔑視発言を報じたことは、事態を急展開させた。発言を受けてトランプ氏の支持率が急低下したため、民主党が上院だけでなく、下院でも過半数を握る公算が出てきた。それまでは、下院で民主党が盛り返すとの観測は、まず見られなかった。
ただし選挙区の区割りから見れば、共和党が依然として優勢だ。
下院では、民主党が過半数を取るには30議席超の純増が必要であり、そのハードルは高い。一方の上院では、民主党の議席が四つ純増すれば両党の議席数は50対50になるが、ヒラリー・クリントン候補が大統領に選出されれば、副大統領候補のティム・ケイン上院議員が副大統領となり議会から抜けるため、均衡が崩れてしまう。
一つの党が両院の多数を占める選挙は「大波選挙(wave election)」と呼ばれる。過去にも1980年、ロナルド・レーガン氏が大統領に選ばれた際の議会選挙で、共和党が上下両院で実質的に過半数を確保した例がある。共和党はその際、下院で表面的な過半数は取れなかったが、南部選出の民主党議院の協力を取り付け、事実上の過半数を確保した。
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