KDDI、通信障害頻発の真相 対策に300億円を追加投資へ

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頻発する大規模通信障害を受けて陳謝するKDDIの田中孝司社長

KDDIは6月10日、4月27日や5月29~30日など頻発しているLTE通信障害について会見を開いた。同社では昨年末から各種の通信障害が発生しており、大規模な通信障害はこれまでに合計6回にものぼっている。

登壇した田中孝司社長は冒頭、「4月30日の決算会見で私自身が先頭に立って技術や運用体制を抜本的に改善すると約束したばかりだった。利用者の皆様に大変申し訳ない」と謝罪した。

一連の障害の共通の原因となったのはLTE基地局の制御装置の故障だった。4月は装置内のソフトウエアバグ、5月29日は4月の障害の原因を解消する修正ファイルを投入していた最中にハードウエア障害が発生したことなどが原因だった。同30日も、29日の障害を受けて復旧手順を見直していたが、修正ファイルを再投入する準備中に、装置の特定のプロセスが過負荷になったことなどから影響が広がった。

KDDIは対策として、田中社長を本部長とした「LTE基盤強化対策本部」なる全社横断的な組織を6月10日付で新設した。顧客の声の収集から情報発信、設備計画の策定、運用体制の強化などに取り組むという。さらに、一連の通信障害の解消に向けて今期中に300億円を追加投資することも決めた。作業手順の見直しやトレーニングはもちろん、各種バグへの対処やLTE基地局制御装置を増強していくという。

足元の販売はむしろ好調だが…

「平時のトラフィック(データ通信量)には対応できているが、障害が発生した後、装置切り替え時などのトラフィック対応に関しては甘さがあった。今後は何かのミスによってバグが発生しても、システムがダウンしないよう対策をとる」(田中社長)。

障害は頻発しているものの、KDDIの足元の販売面には影響はなく、むしろ好調を維持している。番号を変えずに携帯電話会社を乗り換える「番号持ち運び制度(MNP)」によるユーザー流入数でも、5月まで20カ月連続の首位を獲得した。携帯業界は契約期間の”しばり”が存在するため、急激に契約者が減少することは少なく、影響は徐々に表れてくることが多い。販売が好調なうちに障害に歯止めをかけられなければ、信頼の失墜により顧客の流出につながったり、他社との販売競争で不利になったりする可能性も否定できない。これ以上のトラブルは許されない。

(撮影:今井 康一)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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