楽曲作りは釣りのようなもの
――撮影だとロケハン、シナリオだとシナリオハンティングという言葉があります。久石さんの場合は、音楽のインスピレーションを得るためにどこか行かれますか?
撮影現場の空気感は知っておきたいので、できるだけ1回か2回は顔を出すようにしています。そしてあとはひたすら考えるしかないです。
――こういう感じでやりたいというのがあって、それに関連したCDなどを集めて、インスピレーションを湧かせるために聞き込むとったことはあるのでしょうか?
基本的にはほとんどしませんね。むしろ考えるだけです。こちらのイマジネーションがどこまで出てくるのかが問題で、そちらのほうが大事。それにはすごく時間をかけます。楽器を弾くなど、いろいろしている中で、ふっと浮かぶヒントをひたすら待ちます。釣りをしているようなものかもしれません(笑)。
仕事がいくつも立て込んでいて、作品作りが同時に進行していますから、合間合間にひらめくという感じです。とにかく考える時間を長く取りたいなと、いつも思っています。書き始めたら非常に早いというのがありますので。
――依頼があってから、作業はどれくらいの期間かけるのでしょうか?
映画の場合、実作業としては基本的に1カ月から1カ月半。ただ、その前に打ち合わせや台本を読み込むという段階があって、そこからは絶えず曲について考えています。最低半年ぐらいはほしいですね。
――同時進行で仕事されているとのことですが、手掛けている作品同士が互いに影響することはないのでしょうか?
やはりできるだけ同タイプの映画や、同タイプの作品は受けないようにしています。題材が似ていて、考える音楽も似てくると、楽しみも半減してしまいますし、できるだけ違うタイプのものを受けるように心掛けています。
――久石さんの著作には、とにかく曲を作り続けると書かれていました。
映画でも自分の曲でもコンサートでもそうですが、点で考えるのはよくない。線にしなくてはいけない。だから『奇跡のリンゴ』だけがポツンとあるわけではないのです。この時期は他にもいくつかの作品を同時進行で担当していました。2~3カ月の間に3本取りかかっている状況。これは性格的な問題もあると思いますが、立ち止まって考えるよりは、走りながら考えたほうがやりやすいんですよ。
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