女性政治家が浴びてきた「蔑視発言」の中身

ヒドイのはトランプだけではない

意外にもトランプは、侮辱相手に関しては「男女平等」だ。共和党の大統領候補指名争いでは、男性の対立候補にも侮蔑的な発言を連発した。だが、パワフルな女性が、相手にしたくもない低俗な侮辱を投げかけるという点では、トランプはエキスパートだ。

予備選のときは、カーリー・フィオリーナ元ヒューレット・パッカード(HP)CEOについて、「あの顔を見ろよ!」と発言。「あれに投票したい人なんているのか? あれが次期大統領の顔だなんて想像できるか?」と笑った。

わざとらしい親切な言葉もアウト

歴史的に、あからさまな女性の侮辱は、マナー違反とみなされてきたと、ペンシルベニア大学のキャスリーン・ホール・ジェイミーソン教授(コミュニケーション学)は指摘する。そういう意味では、トランプは少しばかりレアな例だ。

当初のトランプの女性蔑視発言は、人々の無意識の先入観にさりげなく漬け込んむ内容が多かった(その分悪質だった可能性もある)。第3回討論会でも、クリントンを「怒ってる」と、何度も野次を入れた。

共和党の重鎮であるジョン・マケイン上院議員でさえ、クリントンが「感情的になっている」と言ったことがある。「感情的」という言葉は、女性が元来ヒステリックで非理性的という偏見を助長すると、ジェイミーソンは指摘する。

一方、9月の米同時多発テロ追悼集会で、クリントンが体調を崩したのを見て、トランプはクリントンのスタミナを疑問視する発言を連発。米軍の最高司令官の役割は担えないと示唆した。

やけに優しい言葉も、むしろ女性を小馬鹿にしたようなニュアンスがある。デービッド・キャメロン前英首相は、労働党のアンジェラ・イーグル下院議員(55歳)に「ねえ君、落ち着いて」と呼び掛けた。

ラトガーズ大学のローリー・A・ラドマン教授(心理学)によると、人は相手が自分が抱くジェンダーイメージ(男性は自信にあふれていて、強いリーダーで、女性は謙虚で協力的でサポート的、など)に一致しないと、最も不快感を抱く傾向がある。

バラク・オバマ米大統領でさえ、2008年にクリントンと民主党の大統領候補指名争いを繰り広げたとき、クリントンは「それなりに感じがいい」と、女性の「感じのよさ」を上から目線で評価するようなコメントが物議を醸した。この種のコメントは、女性にとって反論が難しい。ますます「感じが悪く」見えるからだと、ジェイミーソンは語る。

子供の存在も、女性を攻撃する材料になる。子育て中はリーダーになる能力が十分にないとみなされる反面、子供のいない女性も、社会の期待に応えていないと激しい批判を浴びる。オーストラリアのビル・ヘファーナン上院議員は、首相就任前のジュリア・ギラードについて、「意図的に子供を持たない選択をした人は、誰であれ、人生の意味を全然わかっていない」と発言した。

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