女性政治家が浴びてきた「蔑視発言」の中身 ヒドイのはトランプだけではない

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やたらとへりくだった紳士的態度も、嫌味でしかない。やはり1984年の副大統領候補討論会で、父ブッシュはフェラーロに対して、「フェラーロ、それではイランとレバノンの大使館の違いをご説明しましょう」と、わざとらしく嫌味を言った。

人口の半分を敵に回す危険

女性の外見を攻撃するのは、不適切なだけでなく、女性にとって重要なのは頭脳よりも見た目だと示唆することになる。この手の発言はトランプの得意技だが、トランプの前にも女性の外見を揶揄した政治家は大勢いる。

ミシェル・オバマ大統領夫人が、子供の肥満撲滅キャンペーンに力を入れているのは有名な話。これについて、ジェームズ・センセンブレナー下院議員は、「ミシェル・オバマ、彼女は肥満プロジェクトをやっているけれど、あの尻を見ろよ」と発言していたことが明らかになり、謝罪に追い込まれた。

共和党の重鎮の一人、リンゼー・グラム上院議員も、米国初の女性下院議長に就任したナンシー・ペロシについて、暴言を吐いている。「ナンシー・ペロシが議場にいるのを見たか? まったく気持ち悪い。あれだけ(美容整形)手術をしたら、気持ち悪くもなる」。

もちろん、これは米国だけの問題ではない。イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ元首相にいたっては、野党のロージー・ビンディ議員に面と向かって、「君には知性よりも美しさがある」と言い放った。

それに、決して最近の問題でもない。16世紀、神聖ローマ帝国のユースタス・チャプイズ駐英大使は、ヘンリー8世の後妻アン・ブーリンを「側室、悪魔のような女、売女」と呼んで嫌悪したとされる。

だが、パワーのある女性を、その性差ゆえに侮辱するのは、完全な逆効果になりかねない。パティ・マレー上院議員は、環境問題や教育問題の活動家だった時代、どうせ「テニスシューズを履いたママ」にすぎず、何も変えられないと言われて奮起。逆にテニスシュースを選挙運動に利用して、地方選挙に勝利し、最終的に上院議員の座を手にいれた。

(執筆:Claire Cain Miller記者、翻訳:藤原朝子)

© 2016 New York Times News Service

 

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