「新型出生前診断」による"命の選別"の不安 障害児の排除につながらないか

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三宅秀彦・京都大学医学部附属病院遺伝子診療部特定准教授は、こう指摘する。

「出生前診断は、なし崩し的に行われていい検査では決してありません。遺伝カウンセリングもなく、漠然とした不安から検査を申し込む人がいて、業者もそれを機械的に受け入れるような状態が放置されれば、日本にも同様のクリニックが増え、さらには通販のように医療の手を離れる事態にもなりかねません」

14年のデータでは、年間約100万件の分娩のうち、4分の1にあたる約27万件が高年出産とされる35歳以上の妊婦の分娩だった。また、ここ数年の統計では、従来行われている羊水検査や母体血清マーカー検査の実施件数はともに年間約2万件。おおまかに算出すると、何らかの出生前診断が実施された割合は、全出生の約5%、高年出産では2割程度にのぼる。

もしも将来、NIPTがメジャーな検査として普及していった場合、さらにこの割合は増え、出生前診断が「一部の人が限定的に受けている個人的な検査」という前提は崩れるだろう。

その子がいるだけで

前出の三宅准教授は言う。

「超音波で顔が見えるぐらいに育ったおなかの赤ちゃんとお別れするような選択を突きつけられたら、誰しもやすやすとあきらめられるわけでは決してないんです。でもそうした選択を、女性個人ではなく社会が強制しだすようになれば、社会の流れはがらりと変わってしまう。海外では出生前診断は、障害者に対する福祉コストの抑制を目的とした医療経済の文脈で語られることが多いですが、日本はこの先『社会による選択』を志向していく国になっていくのでしょうか」

日本ダウン症協会の理事を務める水戸川真由美さん(56)は、おなかの子に不安を感じる女性に寄り添う活動を始めた。産前産後ケアの専門家「産後ドゥーラ」として、出生前診断をめぐる相談も受けたからだ。

最近、羊水検査でダウン症と判定が出た妊婦と出会い、相談にのった。妊娠の継続か中断かは、依頼者の選択に沿い、一方の選択を強制することはない。この女性は悩んだ末、今年6月に出産した。赤ちゃんにダウン症はあるが、水戸川さんは最近、赤ちゃんを抱っこして幸せそうな女性の表情をみて、とても温かな気持ちになったという。

「どんな子どもであれ、生きている意味は絶対あるし、本人の気持ちもある。特に特殊な才能があるわけじゃなくても、その子がいるだけでまわりに与える影響ってすごくあるんですよ。私自身、そうわかるまでには時間がかかりました。でも、こういうことって、直接話す機会があったりすると、実感としてわかってもらえるんですよね」

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