50代で出産も!増える「熟年子育て」最前線 年配者だからこそのメリットは

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54歳で父親になったカンパネラ氏(写真:Emily Berl/The New York Times)

ロサンゼルスの美術写真家スパーキー・カンパネラは、自分の生物学的な年齢など気にしたことなどなかった。それでも社会的なタイムリミットが近づいている――。つまり人生の中で何か大切なものをやり残しているという気持ちは膨れあがっていた。54歳のとき、彼は悔いを残さないための行動に出た。つまり父親になったのだ。

彼は独身だったが、そんなことは問題ではなかった。「自分1人で(子作りを)してもいいし、いい相手が見つかるまで待ってもいいと思った」と彼は言う。過去に子持ちの女性と付き合ったことは何度もあったが、彼がなりたかったのは義理の父親ではなかった。

「同じ人生なら子育てを体験したい」

息子のリースはしばらく前に1歳になった。「同じ人生なら、自分の子どもを育てる経験をしないのはもったいないのでは?」と彼は言う。

これは50歳を過ぎて子どものいない多くの人の心に浮かぶ問いでもある。もちろん、ちょっとやそっとの覚悟では夜間の授乳や聞き分けのない2歳児の相手をすることなどできない。だが50歳代は経済面でもキャリア面でも安定した年代だし、寿命が延びている中で、熟年子育てに取り組もうと決意する人もいる。

熟年になって子どもを授かった人の話はよくメディアにも取り上げられる。今年だけでも、投資家で慈善家のニコラス・バーグラン(54)は代理母の力を借りて2人の子どもの父になったし、総合商社ルイドレフュス・コモディティーズのマルガリータ・ルイドレフュス会長は53歳で双子の女の子を産んだ。歌手のジャネット・ジャクソンは、50歳の誕生日の2週間前に妊娠を発表して話題となった。

テノール歌手のルチアーノ・パバロッティは65歳を過ぎてから、メディア王ルパート・マードックは70歳を超えても子どもを授かっている。

もちろんこれまでも、年配の男性が若い妻との間に子をなすことはよくあった。そして50歳を超えての出産は今でも非常に珍しいことに変わりはない(米疾病対策センターの人口動態統計によれば、2014年に出産した50〜54歳の米国人女性はたった743人だ)。

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