50代で出産も!増える「熟年子育て」最前線 年配者だからこそのメリットは
不妊治療クリニックの中には、患者の受け入れ可能年齢の上限を引き上げるところも出てきた。前述のパシフィック不妊治療センターでは、女性の場合55歳(カップルの合計年齢の上限は110歳)だ。マンハッタンにあるニューヨーク不妊治療研究所では上限を設けていない。「57歳で初めて子どもに恵まれた患者もいた」と、同研究所のマジド・ファテ院長は言う。
スティーブ・クラインは家族形成の問題を扱うサンディエゴの弁護士で、代理母の紹介センターも運営している。彼も年齢の高い依頼人が増えていると感じている。「代理母が以前より一般的となり、子どもを持つための現実的な手段だと捉えられるようになった。出産適齢期を過ぎた人々にとっては特にそうだ」とクラインは言う。
「(そうした年代の人々は)経済力があり、子どもに安楽な生活を送らせ、私学に通わせることもできる。シッターの助けを借りることもできれば、カップルのどちらか1人が育児専業になることもできるし、年を取って賢くなり、老成している。若いときよりいい親になれる」
50代半ばで一念発起
親になる決断が周囲を驚かせることもある。ニューヨーク・クイーンズにある婦人科クリニックのマール・ホフマン院長(70)は、ある時点まで子どもが欲しいと思ったことはなかったという。
「私は隊長として戦闘に飛び込んでいくタイプだと自任していた」とホフマンは言う。「母親業をやる余裕はなかった」。32歳で妊娠中絶した際も迷いはなかった。
だが50歳代半ばで20年以上連れ添った夫に死なれ、心にぽっかり穴が空いた。「それまでにいろいろな愛の形を経験したが、究極の無条件の愛として多くの人々が経験する(わが子への)愛は経験したことがなかった。そういう愛を体験したいと思った」と彼女は言う。