日本はなぜ「起業後進国」に成り下がったのか

これは文化というよりリスクの問題だ

この結果はおおむね、今の日本の実態を表している。もちろん、世界中どこでも起業に失敗はつきものだが、失敗の「重大性」が日本ではより大きいのである。たとえば、日本の中小企業のオーナーは、銀行のローンを組むに当たり個人的に保証する旨のサインをし、事業の失敗の責任を個人で背負うことになるが、この負担は個人にはかなり重い。

現在、ネット通販大手「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイで技術部門を率いる伊藤正裕氏は、日本での起業の厳しさを経験したひとりだ。伊藤氏は17歳で会社を立ち上げたが、失敗している。伊藤氏によると、たとえばビジネスの所有者が株式の80%を投資パートナーたちに売却したとしても、所有者は引き続きローンの100%の責任を負わなければいけない。加えて、日本では一度破産すると、将来にわたって信頼を得ることが非常に困難なため、起業の精神的ハードルは高い。個人が負う保証の負担を軽くする道が開ければ、より多くの人が起業に挑戦するのではないか、と伊藤氏は話す。

これとは別に、既存企業による競争抑止的な「商慣習」が挑戦者たちを阻むという現実もある。日本のある起業家団体のトップにこんな話を聞いたことがある。交通事故などの際に非常に便利な携帯型の医療装置を開発したベンチャー企業が、日本で特許を得るのを断念したという話だ。日本では特許は、米国や欧州同様、最初に技術などを創案した人物や企業ではなく、最初に申請を提出したところが得られるようになっているが、この会社は既存メーカーによるあの手この手の「妨害」に遭っただけでなく、特許まで横取りされてしまったという。結局、この会社はほかの複数の国で特許を取得し、海外市場での販売を始めたそうだ。

起業家育成でも遅れている

一方、今夏数週間ドイツを訪れた際には、こんな話を聞いた。ベルリンに拠点を置くスコピス社は、外科手術などの繊細な処置に使われる手術用ナビゲーションシステムを開発した。「拡張現実(AR)」と呼ばれるソフトを使って外科医の内視鏡を誘導するのだが、視界がよりクリアになることで複雑な処置をより簡単にできるようになった。同社は設立してまだ6年しか経っていないが、同製品は世界50カ国で販売されている。同社によると、会社が特許を得るまでに、日本で聞いたような障害はまったくなかったという。

もし日本政府が、より多くの起業家の誕生を本気で望むのなら、独立禁止法を執行させ、特許取得プロセスをもっと公平にするべきだろう。

起業家を教育する面でも、日本は遅れている。経済協力開発機構(OECD)による起業家教育に関する調査でも、日本は最下位に位置する。

たとえば、日本で「事業を経営するうえで必要なスキルや心構えを学校が教えてくれた」と答えたのは20%と、OECD加盟24カ国平均(43%)の半分以下だった。また、「教育によって自発性を養われた」と答えた日本人は18%と、ドイツ(54%)に大きく水をあけられている。

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