日本はなぜ「起業後進国」に成り下がったのか これは文化というよりリスクの問題だ

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信用のない新興企業にとってはこうした信用保証プログラムは役に立つかもしれない。が、斉藤都美氏や鶴田大輔氏のような経済学者の研究によれば、こうしたプログラムは新興企業にとって有益であると同時に、不採算企業の「延命」も手助けしてしまう。ゾンビ企業が多ければ、それだけ成長株の新興企業も生まれにくくなる。

また、政府による企業への研究開発支援も大企業に偏っている。政府による研究開発に対する助成金の額はGDPの1.5%に達する。しかし、残念なのはこうした助成金の92%は大企業に提供されており、資金を最も必要としている有望な新興企業にはほとんど提供されていない。

日本がすぐにできること

ある国が、革新的な企業の成長を促進できているかどうかを知るための試金石のひとつは、国の資本がこうした革新的な企業にどれだけ投入されているかを見ることだ。OECDのエコノミスト3人が9カ国を対象に、平均的な特許取得企業でパテントストックが10%上がった場合、その企業の資本(工場やオフィス、備品など)がどの程度拡大するか調べたところ、最も影響が大きかった米国では、革新的企業のパテントストックが10%上昇した場合、その企業の資本も3.2%伸びることがわかった。日本の場合はごく平均的で、1.5%の資本増大とドイツと同程度だった。つまり、同じ条件の場合、米国企業には、日本やドイツ企業の2倍の資本が流入するということだ。

OECDの報告によると、こうした差が生じる理由のひとつには、古い既存企業から有望な新興企業への資本の異動を妨げる多くの構造的問題を日本やドイツが抱えていることがある。構造的な問題とはたとえば、厳格な雇用保護や厄介な製品市場規制、未熟な資本市場などが挙げられる。こうした問題を是正するには時間がかかるが、それでも短期間でできることもある。

たとえば、ベンチャーファンドのジェイ・シードのジェフリー・チャーCEOは、助成金の対象を中小企業ではなく、設立から日の浅い若い企業に絞るべきだと提案する。日本政府はあらゆる助成金を中小企業に提供しているが、こうした企業のほとんどが革新的企業になることはない。確かに中小企業を支援することは重要だが、日本ではこれが新興産業の促進にはつながらない。なぜなら、中小企業におけるスタートアップの割合は5%と低い一方、75%もの中小企業が設立10年以上経っている会社であるからだ。

チャー氏が言うように、たとえば政府が備品などを調達する際、新興企業と既存企業の提供価格が同じ場合は積極的に新興企業との契約を交わすようにすべきである。これによって、若い企業は生き残るだけの資金を確保できるだけでなく、民間セクターの顧客を獲得するのに必要な信用を得られるようになる。こうしたシンプルな方法であれば、構造的障害を一から是正する必要はない。必要なのは、政府の意思だけだ。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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