日本はなぜ「起業後進国」に成り下がったのか

これは文化というよりリスクの問題だ

こうした環境を改善しようという動きも進んでいる。たとえば、早稲田大学は「早稲田大学アントレプレヌール研究会(WERU)」を発足し、1995年からコースを提供している。同大の瀧口匡教授や東出浩教教授は、「ウエルインベストメント(WERU INVESTMENT)」と呼ぶベンチャーキャピタルも設立。ただ近年、日本の大学生では「二分化」が著しく、一部の学生は起業に意欲的なものの、大部分はリスクを回避する道を選ぼうとする傾向があるという。

もっとも、日本における起業は悪い話ばかりではない。GEMの調査によると、実際に起業しようと考えている人は米国でそう考えている人たちよりも行動的だ。たとえば、自分に起業する能力があると信じている日本人の19.5%が実際に起業しており、これは米国の17.4%を上回っている。

破壊的企業トップは日本企業だった

米国を拠点とするコンサルティング会社Tällt Venturesは、2年おきに「破壊的企業トップ100」を発表しているが、2016年5月に発表された最新版では日本企業2社がランクインした。

そのうちのひとつは、100社のうちトップに選ばれたスパイバーだ。2007年に設立された同社は、クモの糸を原型としたフィブロインたんぱく質から人工素材を開発。仮に成功すれば、石油化学製品は今後必要なくなる技術革命をもたらす可能性がある。同社は、日本のスポーツウエアメーカー、ゴールドウインと提携し、世界的に人気がある米アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(TNF)」ブランドの「ムーンパーカ」のプロトタイプを発表したことで一気に知名度を上げた。

現在33歳の設立者、関山和秀氏は自身が慶應義塾大学先端生命科学研究所の大学院生だったころにスパイバーを設立。2015年時点の同社の売上高は250万ドルで、100人の従業員を抱えている。これまでに、ゴールドウインやベンチャーキャピタルのJAFCO、慶応大学から1億3000万ドルの資金調達に成功している。

関口氏の例は決して珍しくない。振り返ってみれば、日本はそう遠くない昔、発明の中心地だった。日本の高度成長期(1950~1973年)には、日本企業の多くは発明や大量生産が可能な新製品を生み出すことにおいて世界のトップランナーだった。それはビデオテープレコーダーからスーパータンカーまで、またテレビやトヨタ自動車の生産システムを支える鉄鋼の電気炉や継続的な鋳造プロセスまで「世界初」の技術や手法だらけだった。

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