ヘッジファンドの訪日中止に感じた、ただならぬもの
「ごめん、タケオ。今回は『ボスの急病』でニッポンには行かないことになりました。でも近いうち、必ず行く予定だから。その時はまた時間を調整してください」
私はただならぬものを少しだけ感じていた。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)を分析する時にもっとも大切なこと。それは公開情報分析と非公開情報分析を巧みにミックスすることである。料理に例えれば前者は材料、後者は香辛料にあたる。前者だけでは真実を焙り出すことはできないし、後者だけでは真実の一断面しか見えない。両者が組み合わさってはじめてグローバル・マクロのダイナミズムが見えて来る。
「ロンドン・シティ有数のヘッジファンドのチームによる訪日が突然中止された」―――これは立派な非公開情報だ。無論、表向き語られる理由など信じてはいけない。それよりも大切なのはマーケットの猛者たちがわざわざ現地にまでやって来るということは、それなりに巨大なディールが本来ならば仕組まれていたはずだったということなのだ。
しかし訪日が中止になったということは、その「前提」が崩されたことを意味していた。何やら不気味なものを感じたのは、それが理由だったのである。
先般上梓し、お蔭様で版を重ねている拙著『「日本バブル」の正体~なぜ世界のマネーは日本に向かうのか』(東洋経済新報社)について、6月2日に東京で行う無料の新刊記念講演会で詳しくお話する予定だが、わが国は「日本バブル」の第1弾の前半から後半へと今、突入したところである。「第1弾?前半・後半??」と読者はいぶかしく思われるはずなので少しだけ説明すると、現在のわが国が置かれている状況は、次ページのとおりだ。
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