「2段階」の形を取る日本バブル
●わが国は人口動態上、「団塊の世代」が基礎年金を受け取り始める2012年から2015年までの間、政府債務の対GDP比率が急激に上昇するという未曽有の危機に突入する。これを理由に、米欧のヘッジファンドや投資銀行などがまたぞろ「日本国債の空売り」を仕掛けて来る危険性がある。
●そのため、わが国の金融・財政当局は自ら「デフォルト(債務不履行)宣言」を行う用意を進めていることを誇示し、対抗しようとしている。具体的には財政調整(「事業仕分け」「政府保有資産(株・国有地)売却」)と債務交換(「増税」「社会保障制度の改廃」)だ。
これらが済んで、はじめて「デフォルト宣言」することができる。企業と同じで自ら破産宣言をすると借金取りはもう追いかけて来ない。その素振りを見せるだけでも有効なのだ。
●実は、安倍晋三首相が金融についてユニークなアイデアを持っており、これが「アベノミクス」になったわけではない。まずは起爆剤として日本銀行が大量のマネーを市場に対して供給し始めることは、2010年秋に決定された「包括的金融緩和策」による既定路線であったからだ。正確に言えば、国民世論にわかりやすいように安倍政権が金融・財政当局によって「道化師」として使われたに過ぎない。
●当初、大量のマネー供給によって始まった「日本バブル」は円安を基調としている。だがこうした状況は持続しない。なぜならば円安誘導は政府・日銀がどんなに巧みに説明したところで「通貨操作」なのであって、各国からの批判を浴びるからだ。したがってある段階から巻き返しが図られ、円高基調へと転換する。
●しかし、実はこれで「日本バブル」が終わるわけではない。この円高転換と共にある条件が満たされた場合、むしろ「日本バブル」はより激しく続くことになるのである。その条件とは「わが国を除いて、他に投資先がなくなること」だ。つまり何らかの理由で、世界のどこを見ても投資先がなくなるような状況が訪れれば、マネーは我が国へと殺到し、強烈な円高、そして株高、債券高となる。「平成バブル」と同じ「トリプル高」だ。
● したがって「日本バブル」は全部で2段階の形をとる。円安基調の第1弾と、円高基調の第2弾だ。そしてこの第1弾についても、米欧の越境する投資主体がリードしてきたのが前半であるとするならば、後半においては、その役割が国内機関投資家へとバトンタッチされ、最後は「夏のボーナス」を手にした個人投資家へと日本株が転売されていくことになる。
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