「あのショートゴロは狙いどおりです」
翌日の試合前、“ドヤ顔”の栗山が言った。明治神宮外苑の室内練習場からクラブハウスまでを歩きながら、満足気な表情で狙いを明かしていく。
「犠牲フライを打ちにいったら、もしフライの距離が足りなかった場合、点が入らないでしょ? あのケースで最悪なのは、点が入らないこと。もし1、2打席目で感じがよく、自信の持てる打席だったら、もちろんヒットを狙いにいきます。僕の打席の前にショート、セカンドが守備位置を下げました。だからセカンドゴロならツーアウトになっても1点入り、セカンドランナーもサードに進めますけど、今の僕の状態を考えれば、ショートゴロで1点がいちばん堅いんじゃないかな、と」
この試合を打率3割4分6厘で迎えた栗山は、1打席目はバットを1度も振らずに四球で出塁。2打席目は外角低めのストレートをショートゴロに倒れた。相手先発の村中恭兵に対し、タイミングが合っていないと感じていた。
そして迎えた3打席目。初球は真ん中高めのスライダーでストライクを取られる。その時点で、確実に同点にしようという考えが強くなった。
「初球はスライダーで先手を取られたから、バッテリーからしたら次は何でも投げられる状態になってしまった。本当はセカンドゴロのほうがよかったんですけど、バットの面を作って打てるのはショートゴロ。どの球種でも打てるのはショートゴロでした」
結果、内角のストレートを狙いどおりにショートへ。この一打で同点に追いついた西武は、続くホセ・オーティズがセンター前タイムリーで逆転に成功する。この回の2点が決め手となり、4対3でヤクルトを下して連敗を4で止めた。
「原点に戻ります」
今季開幕直後、栗山に2013年の目標を尋ねたことがある。昨季までは1、2番を任されることが多かったが、3番として期待される今季は、何を見据えて打席に立っていくのか。栗山は「難しい表現になりますよ」と前置きしたうえで、話し始めた。
「自分にできることは変わらないと言っても、打順の役割としてフリーで打っていい場面が多くなります。1、2番のときとは、役割が違いますね。だから原点に戻ります。初球からストレートに合わせて、しっかり振っていく。もちろん、あらゆることを頭に入れてのことですよ。3番になって戸惑う部分は、フリーでどうやって打つのか。だからストレートに合わせて、強く振っていく。その中で打球方向や角度など、4、5月になれば数字が出てくるから、目標を見つけていけばいい。何も考えないと言うと少し変な表現ですけど、そんなのはデビューしたとき以来ですね。自分を試せるし、レベルアップを果たすにはこれ以上ないですよね」
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