ショートゴロに隠された、栗山巧のすごみ 月間MVPプレーヤーの目標達成力

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プロ入り12年目の今季、栗山は開幕から順調にヒットを重ねている。4月16日のオリックス戦で通算1000安打を達成すると、3月の3試合と4月の24試合で打率3割6分6厘、打点24、得点圏打率5割2分9厘で、キャリア初めての月間MVPを受賞。5月22日時点の成績は、打率がリーグ7位の3割2分5厘、打点は同5位タイの28、出塁率はリーグトップの4割5分だ。

いずれも上々の成績だが、目標をどこに定めたのだろうか。5月15日、試合前の神宮で聞いてみた。

「どれもええ感じで来ていますけど、せっかくなので打点に意識がいっているところはありますね。なんやかんや言っても、クリーンアップで点が取れなかったら、チームの流れが悪くなるし。僕が打点を挙げられているということは、1、2番もチャンスを作れているということです。そういうときに活躍できるのが、いちばんチームの流れに沿った活躍なのかなと思いますね。打点もそこそこいい位置にいるから、自己最高くらいいきたい。もちろん出塁率を落とさないでの話ですよ」

短期目標がブレると、中期も長期もブレる

打順の中で自らに課された役割を考え、何をすべきか判断する。3番として1、2番、あるいは下位打線が作ったチャンスを生かすには、打点が最高の仕事だ。自分にも、チームにとってもプラスになる。

そういった論理的思考が、自身の目標設定においてもできている。通算1000安打を達成した数日後、栗山に「2000安打は目指さなければいけない目標?」と尋ねると、現実主義者らしい答えが返ってきた。

「まだ夢の段階ですけど、夢として持ちたいと思いますね。2000本が目標になるように、早く1500本を打ちたい。そうすれば夢が近づいてくると思います」

短期目標をクリアしていけば、おのずと中期目標も見えてくる。その延長に、長期目標がある。だからこそ、目の前の1打席でやるべきことを、決しておろそかにしない。短期目標がブレると、中期や長期にもズレが出てくるからだ。

神宮で放ったショートゴロには、深い意味が隠されていた。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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