北朝鮮に垣間見える、核実験より危険な兆候 ダニエル・スナイダー氏に聞く(下)

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――中国政府は北朝鮮にどう対応しようとしているのか。

ダニエル・スナイダー
スタンフォード大学アジア太平洋研究センター副所長
専門はアジアにおける米国の外交・安保政 策、日本と韓国の外交政策。コロンビア大学卒(東アジア史専攻)、ハーバード大学ケネディ行政大学院修士。クリスチャン・サイエンス・モニター紙のインド 特派員、東京特派員、モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者、コラムニストを経て、現職。日本、中国、韓国、台湾、米国の歴史教科 書を徹底比較した「分断された記憶と和解」プロジェクトを担当する

アナリストたちは、中国メディアの論評も含めてさまざまな兆候に注目し、中国政府の考えを探り出そうとしている。中国の指導者たちの言説を注意深く読み込み、中朝国境をまたぐ行き来を注視している。一部のアナリストたちは、中国政府が北朝鮮政府に愛想を尽かし、北朝鮮の指導部を見捨てる方向に動いていることを示す証拠を、必死になって探しているようだ。

私としては、説得力のある証拠は得ていない。中国政府の高官たちと話していると、強い怒りの声が聞こえてくるし、北朝鮮が抱える問題の性質についての極めて率直な評価も耳にする。しかし結論は今までと変わらず、朝鮮半島の平和と安定が中国にとっての優先事項であり、非核化は後回しでよい、というところに落ち着く。

中国としては、北朝鮮体制の安定を損なうような手段を講じたくはない。中国の政策は以前からずっとそうだった。北朝鮮は確かに、中国にとって大きな頭痛の種だ。北朝鮮のような依存国家と国境を接していることに、中国の指導者たちは立腹し、いらだっているのだろう。

北朝鮮の挑発は、米軍のプレゼンス拡大につながる

しかし、かつて米韓関係にもぎくしゃくした時期があったことに留意してほしい。大国とその依存国との関係においては、決して珍しいことではない。時には物事がうまくいかず、尻尾が犬を振り回すこともある。

それが昨今は、中国と北朝鮮との間で、さまざまな形で表れているのだ。中国は北朝鮮が3回目の核実験を実施するのを望まなかった。北朝鮮には中距離ミサイルの実験を実施してほしくない。中国は北朝鮮に対し、どんな種類の挑発も控えてほしいと望んでいる。それは何よりも、北朝鮮が挑発を続ければ、米軍がこの地域でプレゼンスを拡大することになるからだ。

中国としては、そのような展開は望まない。したがって中国政府の指導部が北朝鮮を抑えようとするのは、もっともなことだ。しかし中国は、最終的に北朝鮮の体制そのものを弱体化させるおそれのある手段を講じるには至らないだろう。

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